76、統計とは(統計を考える)


貨幣経済は、人、物、金の量で表す事が出来る。


経済は、人が生きるための活動である。
経済は、人が生きていくために必要な資源を生産し、調達し、分配し、消費する一連の過程の上に成り立っている。
経済の根底を成しているのは、人が生きていくために必要な資源を、必要な時に、必要なだけ生産し、調達し、分配し、消費する事である。
生産、調達、分配、消費を円滑にするための手段が「お金」であり、仕組みが貨幣制度や市場である。
この構造が見えなくなると手段である「お金」に経済、即ち、生活が振り回されることになる。

大恐慌も、ハイパーインフレーションも一種の災害、人災と言える。
大恐慌やハイパーインフレの様な経済災害を未然に予測し、制御する事は、確率統計の重要な役割の一つである。
その為には、単に表面に現れた現象にとらわれることなく、その背後にある構造や仕組みを明らかにすることである。

「お金」の変化は、人や物の働きと無関係なところで動いているように見える事がある。
それが経済の働きや動きを解りづらくしている。しかし、経済の根本が生きるための活動である事を考えれば何が経済の本質かはわかるはずである。
経済を動かしているのは、人であり物である。そして、人と物の動きを促している原動力は「お金」の力と流れである。
「お金」の力が強すぎて社会や人の一生を振り回しているようだとしたら、それは、明らかに仕組みに欠陥があるのである。

確かに、経済現象は複雑な変化を見せる。
しかし、経済現象を引き起こすの要因はそれほど多くあるわけではない。
貨幣経済下では、貨幣の流れと残高として現れる。
貨幣は、人と物の動きの影である。即ち、負である。
突き詰めてみると経済は、人、物、金の量によって定まる。
経済を動かしている個々の要因に分解して統計をとるのは、経済統計の常道である。
個々の要素の動きに分解したうえで全体の動きに再構築し、経済全体の動きを予測するのである。
その為にも経済を動かしている仕組みを明らかにする必要がある。

貨幣の動きは、入れと出で、貨幣の働きは、売り買いと貸し借りに要約される。
そして、経済の状態は、流れと残高を見る事で推測される。

経済の時系列データは、お金の働きの結果として現れる。

経済の変化は、第一に、流れと残高に分割できる。第二に、実と負に分ける事が出来る。第三に、人は経済の規模を制約する。第四に、物は、生産量と流通量(在庫量)と消費量に分割できる。第五に、お金の働きは、売り買い、貸し借りに分類できる。第六に、物と金の動きは入りと出、そして、残によって測る事が出来る。第七に、経済単位は、自然数である。第八に経済はベクトルである。

貨幣の状態には、流れと溜まりがあり、流れは流量で溜まりは残高で示される。

貨幣価値は実と負の積である。実とは、物の価値であり、負とは、貨幣単位である。

人は、経済の基礎単位を構成する。第一に、一人当たり、第二に、総人口である。1人当たりは部分の単位を、総人口は、全体の単位を制約する。

経済を構成する個々の要素には、位置と方向を持った働き、そして関係がある。即ち、経済現象はベクトル空間を構成している。
個々の要素の働きの方向は、前期後期との関係で決まる。

時系列分析をする際に、気を付けなければならないのは、表面に表れている現象に目を奪われて、現象の背後で現象を引き起こしている状況、環境、場の力、背景、仕組みなどを見落とす事である。
状況の変化に合わせて設定条件を変えないと経済の実態は見えてこない。

例えば、人口が増えていて所得が上昇している時代と人口が減少し、所得が低下している時代とでは、状況が違う。
市場が拡大している場合と縮小している場合とでは、必然的に市場に働いている力が違うのである。

現在、マンションブームが起きている。しかし、所得の状態や人口の動向、空き家、空室率などを鑑みないとマンションブームに乗っていいかどうかの判断は下せない。

バブルが最高潮に達し、資産価格が頂点になった時、借金をしてアパートを建てたとする。バブルが崩壊し、資産価値が急速の冷え込み、収益も横這いになったら、借金の返済に追われることになる。返済資金を所得の拡大によって賄おうとしていたのが当てが外れる。資産価値が上昇していれば、たとえ収益が悪くても担保によって資金繰りで足りない部分を補う事が出来るが、資産価値が下がっている時はそうはいかない。かえって金融機関に資金の回収を計られてしまう。

市場が拡大し、所得が上向いている時に、グレードの高いマンションを建てても市場は、消化できる。しかし、人口が減少し、市場が縮小している場合は、市場は消化できない。食い合いになり、資産価格の低下を招く。
この様な状況がで重要なのは、確率や統計に基づいて行政が描く構想なのである。先を読み違えると経済災害を招くことになる。

経済の先を読む時、忘れてはならないのは、資源は有限なのに対して、数は無限だという事である。数というのは、名目的な事であり、貨幣価値などである。
無限であれば、どんなことでも仮想できる。想像力は限りなく広がる。時間を超える事でも不老不死でも、しかし、現実の世界には限りがある。人は、お金さえあれば何でもできると錯覚している。しかし、現実に生産できる量にも、資源も、消費量も限りがあるのである。それを忘れるから、人は「お金」に振り回されるのである。




ベイズ統計
確率と統計
確率と統計(教育)



参照
「道具としてのベイズ統計」 涌井良幸著 日本実業出版


       

このホームページはリンク・フリーです
ページの著作権は全て制作者の小谷野敬一郎に属しますので、一切の無断転載を禁じます。
The Copyright of these webpages including all the tables, figures and pictures belongs the author, Keiichirou Koyano.Don't reproduce any copyright withiout permission of the author.Thanks.

Copyright(C) 2017.7.18 Keiichirou Koyano