76、統計とは(統計を考える)


クロス・セクション分析と時系列分析


確率・統計分析には、クロス・セクション分析と時系列分析がある。

統計分析の基本は、クロス・セクション分析である。
時系列分析と言っても厳密にいえば、クロス・セクション分析だと言える。
つまり、時系列分析は、クロス・セクションの一軸が時間軸だという事である。、

確率・統計データの基本は、二変量データである。
確率や統計は、最低限二つの要素、変数からなる。
変数は目的変数と説明変数からなる。ただ、何を目的変数とするか、何を説明変数とするかは、分析の目的に応じて任意に設定される。
二つの変数によって構成される確率や統計と複数の要素、変数からなる確率や統計がある。
データの構造は、二つの変数からなるものと複合的なものがある。

複数の変数、相互の関係を明らかにするためには、一旦、二つの変数を選んでその相関関係を調べる必要がある。
クロス・セクション分析は、相関関係を明らかにする際、効力を発揮する。
また、データ間の込み入った関係を明らかにする時も、クロス・セクション分析は有効である。

クロス・セクション分析を行う場合、ヒストグラフが効果的である。ヒストグラフは、分布を図式化するためには、有効な手段である。

官庁統計の多くは、クロス・セクションデータである。
ただ、官庁統計の多くは、複数年にわたって定時にとっている。故に、重ねて用いれば時系列データに活用する事もできる。
この様にクロス・セクションデータと時系列でデータの性格を合わせ持つものをパネルデータという。

クロス・セクションデータの目的は、データ間の関係を照合する事にある。時系列データとクロス・セクションデータの違いと言っても時間軸が加味されているかどうかの問題だともいえる。時系列データも見方を変えればクロス・セクションデータの一つである。

時点を特定したクロス・セクション分析の場合は、記述統計が妥当であり、時間の変化を想定した時系列分析の場合、推定統計、ベイズ統計などが妥当である。
クロス・セクション分析には、因子分析や要因分析などがある。

クロス・セクション分析をする場合、何と何を照合するかが重要となる。
また、要素間においては、照合に適さない事や意味のない事もある。要素の性格によっては、単純な比較ができず対数グラフのようなものを用いた方が効果的である場合がある。

データは、数列として現れるが、1つの数列だけでは、数列の性格を解析することは難しい。主となる数列に対応する要素の数列を組み合わせる事によって数列の持つ性格を読み取るのが、クロスセクション分析で必然的に組み合わされる数列は、個々の要素が一対一に対応できるものでないと成り立たない。

例えば、成績の分布を分析しようとしたら、成績と人数は、一対一に対応している必要がある。これは、当然な事であるから見落とされがちだか、クロス・セクション分析を考える上では重要な要件である。
数列と数列を組み合わせようとすること自体が解析の手段となるのである。どのような要素と要素を取り上げて組み合わせるかは、クロス・セクション分析の大前提であり、それ自体が仮説に基づいている。

時系列データは、時間軸が陽に作用している事でクロス・セクションデータは、時間が陰に作用しているものである。
クロス・セクションデータは、時間が陰に作用していると言う点で空間や構造を分析するためのものだともいえる。
クロス・セクション分析は横断面分析ともいえる。

時系列分析が損益計算なら、クロス・セクション分析は、貸借対照表と言える。
経営分析の際、基本的に推移と照合、比較という手法が用いられる。
推移を見るのが時系列分析である。
照合、比較には、同業他社との比較、損益内の勘定の比較、貸借内の勘定の比較、損益貸借間の勘定の比較がある。

クロス・セクション分析にせよ、時系列分析にせよ、分析するための手段として比較対象が重要な位置を占めている。比較対象を実行力あるものにするためには、単位の統一がある。何を基準にして単位を統一するかは、分析の目的によって決まる。
そこに指標化する動機と重要性がある。何を基準に比較対照するのかが重要になっている。一人当たり、一世帯当たり、一国当たりというように単位あたりを比較したり、また、一時点を百として指標化したり、比率によって比較するというようにして一定の尺度を設定する。
この様にデータ間を比較するためには、データの構造を知る必要がある。
データにも構造がある。例えば国内総生産は、単位当たり総生産に総人口をかけたものである。単位当たり量と総量の積というのは、1つの基本計である。

目的や前提によってクロス・セクションデータ分析を採用するか、時系列分析をするかを決める。目的や前提によって統計に対する考え方も変えるべきなのである。なぜならば確率や統計は、目的ではなく手段だからである。
目的に関わらず手段を絶対化するのは、本末転倒である。
科学や数学の危うさ怪しさは手段を目的化する事に負う事が多い。科学や数学は、手段であって目的にはならない。
真理を探究するのは、人々を幸せにするため、正しい生き方を実践するのが目的であって真理を探究すること自体は手段に過ぎない。
科学を目的化して科学万能だとするのは、神を冒涜する事である。



ベイズ統計
確率と統計
確率と統計(教育)



参照
「道具としてのベイズ統計」 涌井良幸著 日本実業出版


       

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