経済の現状

日本経済の現状について



5 所得が伸び悩んでいるのに金融資産が積み上げている



所得が伸び悩む中で民間の金融資産が積み上がっている。
2013年現在で家計の金融資産は、1,624兆円,非金融法人が996兆円ある。
非金融法人が99年に一旦、788兆円で頭を打ち、02年頃から上昇に転じてはいるが、横ばいしているのに対し、家計は、多少の波はあるものの基本的に上昇を続けてきた。その結果、90年に129兆円だった乖離が、98年には、607兆円に広がり、乖離幅は13年までほぼ変わっていない。

1998年から日本はゼロ金利政策がとられている。
ゼロ金利政策によって金利による正の付加価値が消失している.その為に、減価償却、人件費といった負の付加価値しか働かなくなっている。
それが所得が停滞している一因となっている。

預金は、金融機関から見ると借金である。この事を忘れてはならない。

ここでも三面等価の原則が成り立つ。
家計、非金融法人企業、一般政府、海外部門はお互いにお金を融通し合う事で成り立っている。
そのお金の融通をきかせるのが金融機関である。

国債残高は、2014年9月末には、1,039兆円を超える。

財政問題を一段と深刻にしているのは、金利を機能不全に陥らしている事である。
金利は時間価値である。金利が働かなくなる事は、資金の循環を妨げ、付加価値を消滅させてしまう。時間価値が働かなくなる事によって所得の伸びが止まるのである。

一般政府の主たる収入は、税収である。日本の平成26年度の一般会計の規模は、96兆円である。うち、新規国債発行額が、41兆円である。そして、12年度の税収は、50兆円。所得税が14兆円、消費税が15兆円、法人税が、10兆円である。そのうち23兆円が国債費、即ち、返済や利払いに当てられる費用が23兆円あるという事である。

この国の借金を埋めているのが、家計と企業の預金と海外からの借入である。
ここで注意しなければならないのは、家計と企業の預金というのは、先にも述べたように、金融機関にとっては借金である。

1社2社が投資を控えているというのではなく、国中の企業、産業が全てが投資を控えているとしたらそれは個々の企業の問題だけでなく、何らかの別の力が働いていると考えざるを得ない。

バブル崩壊後民間企業は、投資を控えてひたすら有利子負債を返済してきた。それなのに、社会全体としては、有利子負債は増えている。その理由は、金融資産は、有利子負債を視点を変えたものだと言う点にある。民間企業が負債を返済しても市場に流れず金融機関に金融資産として累積すれば、社会全体として負債は積み上がるのである。
国民経済計算では、負債と金融資産は、同次元に扱われる。負債を返済しても返済された資金が市場に供給されないと金融資産と積み上がり、有利子負債と同じ働きをする事になる。要は、供給した通貨の量をどの様に制御するのか、問題なのである。

金融機関は、預かったお金を貸し出し、預金と貸出の金利差で利益を上げている。預金が多いというのは、借金が多いという事であり、預金も沢山あれば良いという事ではない。問題は、資金の運用なのである。効率よく預金を運用できなければ,金融機関にとって借金が積み上がるようなものなのである。

国民経済計算における民間金融機関の貸出/預金の比率は、80年代前半は、110%代だったのが,後半から立ち上がり、91年から92年にピークに達し、それから下降を始め、03年には、100%を割り込み、07年のリーマンショックを境に更に低下して13年には、78%落ち込んでいる。(図5-1)
信用金庫に至っては、2014年4月末に50%を割り込んでからは、50%割れが常態化しつつある。(日本金融通信社)預かった金、つまりは借金をした金の半分も運用されていない事を意味している。
東京商工リサーチの調査によると2014年、国内銀行114行の預金と貸出の差は、224兆円に達していると言われる。

これは資金が金融機関に滞留し、市場に出回っていない事を意味している。
これでは、所得が持ち上がらないのは無理のない事である。
所得は、通貨の流量と回転数に依るからである。

つまり、お金が市場から溢れて金融機関に滞留している状態なのである。しかも、溢れた資金が国債の購入に充てられている。
民間金融機関にお金が滞留しているからと言ってそれを実物市場に振り向けたら、国債の買い手がいなくり、長期金利が上昇する。それが財政赤字の一番の問題なのである。

現在、日本は、クラウディングアウト状態にあると言わざるを得ない。

貯蓄率と投資率は、正の相関関係があるというフェルドシュタイン・ホリカワの研究もある。(「人口経済学」 加藤久和著 日経文庫)ただいずれにしても固定資産形成は、08年には、-2兆円、09年には、-13兆円、貯蓄は、08年21兆円から09年には-2兆円へと急激に下落した事である。貯蓄は、次年度黒字を回復したが13年もに兆円のマイナスである。
貯蓄と投資がある程度相関関係がある事は見て取れる。問題なのは、総貯蓄が91年に85兆円でピークとなりそれから下降し続けている事である。そして、先にも述べたように09年にはマイナスにまで落ち込んだ事である。そして、それに連動するように91年に73兆円でピークを迎えた総固定資本形成(純)03年には、18兆円。有形固定資本形成は、09年には、-13兆円を記録した事である。

問題は、金融資産と負債とは、等価だという事である。
プラザ合意が為された1985年には2,000兆円だった有利子負債がバブルのピークには、4,000兆円に達し、一時、下がったものの2013年には4,000兆円代に戻っている事である。
バブルの頂点である1990年に2,450兆円に達した地価がバブル崩壊後1,120兆円、失われた地価と株価を合わせた2,000兆円余りが負債に置き換わったと言える。
失われた資金は、投資に向けられずに金融機関へと環流されている。
また、土地勘定と有利子負債の間にある3,000兆円近いギャップが新規投資を抑制しているのである。なぜならば、3,000兆円近いギャップというのは、担保不足を意味しているからである。この様な状態では金融機関は、貸したくても貸せない、企業は借りたくても借りられないという状態に陥ってしまう。投資や融資をしないというのではなく、出来ないのである。

不良債権と言っても土地と株式とでは、性格が違う。株式のように、流動性の高く使用価値のない債権は、売却し,清算して損を確定した方が新たな投資を呼び込む事が可能となる。
しかし、流動性が低く、利用価値のある不動産は、清算するよりも活用して収益力を高める事を考えた方が生産的なのである。債権と不動産の違いを無視して強引な不良債権の処理、それも、一括的に処理を仕様とすれば、地価の下落を招く事になる。景気の底を割ってしまうだけである。
売らなくても言い土地まで売らせても、新たな不良債権を作り、尚且つ、返済目処の立たない債務が残るだけなのである。
現在の日本の状況は、謂わばブラックホール現象に陥ったようなものである。地価の収縮が止まらずにあらゆる経済的価値を吸い込んでしまっている。
この様な状態に陥れば、個人事業者や中小企業と言った弱い者から淘汰される事になる。
それを競争力がないからと決めつけるのは無慈悲な事である。元来、個人事業や中小企業は、学歴とか資産を持たない弱者の最後の砦だったのである。その最後の砦が崩された事で、シャッター街が増え、街がゴーストタウン化しているのである。世の中は、強者だけのものではない。幸せは、勝者だけに許されているのではない。
経済の本来の目的は、全ての人々を豊かで幸せにすることなのである。

一般政府、金融機関、民間は,三竦みの状態にある。政府は、財政を発動し、公共投資を増やしたいが、公共都市を増やせば、財政が悪化する。金融機関は、民間に資金を回したいが、そうすると国債を購入する事が出来なくなり、また、民間の担保価値が毀損している。民間は、人件費を上げ、雇用を増やし、新規投資をしたいが、債務の圧力で融資が受けられない。また、公共投資も期待できない。

この様な状態でいくら金融緩和をしてもなかなか実効力は上がらない。資金が実物市場に回らないからである。
お金が逆回転をしているのである。それが所得の上昇の頭を抑えているのである。

資金効率を高め、所得を伸ばすためには、資金を実物市場に循環し、収益の向上を計る以外、手はないのである。
資金を市場に循環するというのは、過当競争を激化する事ではない。単純に資金を循環させても資金が効率よく働かなければ実効力はない。
収益の向上に結びつかなければ所得に反映されず。ただいたずらにお金や物が空転するだけになる。目指さなければならないのは適正価格を維持しながら、お金と物とがほどよく循環する状態なのである。

メディアの多くは、正義漢ぶって安売り業者を煽り立てるが、その結果は、一部の安売り業者のオーナーを潤わせ、ブラック企業を横行させただけである。長者番付の上位にブラック企業のオーナーだけが名を連ねるようで経済は活性化できない。

肝心な事は、適正な価格で公正な競争が出来る環境を作り出す事である。経済の目的は、生きる為の活動を支援する事である事を忘れてはならない。金儲けは手段であって、目的ではない。要は、金を如何に循環させるかなのである。


図5-1 負債・金融資産(ストック)差額

日本銀行 単位1兆円

図5-2

2000年度国民経済経済書 内閣府 単位10億円


参考 「ネットの政府」 村藤 功著 同文館出版
    「人口経済学」 加藤久和著 日経文庫


       

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