経済と政治


 経済は、個々の私的生活の営みに基づく現象・事象を指して言う。それに対し、政治は、公の営みに基づく現象、事象である。
 公というのは、何らかの社会や組織を指す。自給自足的な社会では、人は、政治的にも、経済的にも自律している。しかし、社会が進化すると分業が進み、人は、全体の中の一部を担うようになる。部分は、全体に従属するために、社会や組織が発達すると発達しただけ構成員は、従属的、依存的になる。即ち、一人では生きられなくなるのである。そこで社会が形成される。現代人は、何らかの組織、社会に加われないかぎり、生活ができないくらい社会は発達している。そこに政治が生まれる。
 つまり、政治とは、社会や組織を維持するための活動である。この様な政治活動は、社会や組織の体制、在り方、構造によって支配されている。
 君主制度、封建制度、民主義制度では政治の機能は自ずと違ってくるのである。

 政治的空間は、公的所有権、占有権によって制約される。この場合の公の単位は、国家である。近代以前は、その範囲は、統制の及ぶ範囲であり、観念的な範囲であった。しかし、その範囲が陸地の全体に及ぶに従って物理的空間に変化したきた。そして、今日では、陸地から海洋や宇宙、地下にまで及んでいる。いずれにせよ、政治的空間は、物理的境界線を持っている。この境界線が、国家の紛争、即ち、領有権の問題を引き起こしている。ただ、この領有権の主張にしても明確な根拠は、本来存在しない。なぜならば、国家という概念そのものがまだ新しいものであり、国境は、国家間の取り決め、契約によって決められるものだからである。もし、国家間の話し合いが不調に終われば、今日でも武力でもって決着をつけることになる。

 政治は、物理的空間に支配されている。

 公が社会、組織だとすると、国家は、政治的単位の一つである。国権の拡大により、陸地は、いずれかの国権が及び範囲に埋め尽くされた。そして、国権の及ぶ範囲は、国法の及ぶ範囲であるから、国家は、境界線によって範囲を限定されるようになった。その結果陸地は、国境線によって仕切られようになったのである。この様な国法は、国法の及ぶ範囲内においては、拘束力が発揮されるから、人間は、いずれかの国に属さなければならなくなったのである。

 国家は、個々の生活を公の営みに、公の営みを個々の生活に変換する機関だと言える。それによって私的行為と公的行為の整合性を国家は、とっているのである。
 例えば、国家機関としての議会は、私的意見を公的決議に置き換える機関である。
 その意味では、財政は、個々の生活の営みを公の営みに公の営みを私的生活の営みに置き換える、変換する手続きだと言える。

 政治と経済は、密接な関わりがある。一つの事柄、事件、事象、運動を政治的空間と経済的空間は、共有している。そして、それぞれの場から働く力が均衡したところに運動は収束する。

 経済は、流れ(物の流れ・通貨の流れ・人の流れ・情報の流れ)として表面に現れる。それに対して、国家は機関である。政治は、その機関の内的・外的運動である。つまり、経済の流れを調整するのが政治の重要な役割なのである。

 この様な政治の機能には、大きく分けて三つの機能がある。一つは、立法であり、今一つは、司法であり、最後に、行政である。そして、経済は、この三つの機能の影響を経済的場を通して受ける。政治は、方によって経済の場に間接的な影響を及ぼす。最も直接的関係があるのは、商法、証券取引法であるが、民法や刑法も重大な影響を与えることには変わりはない。また、行政を通じて直接的に市場に影響を及ぼすことがある。

 政治は、あらゆる局面で経済に影響を与える。政治の動き一つで経済は重大な影響を受けるのである。

 アメリカ大統領選挙は、経済には無縁な政治的話のように見える。しかし、誰がアメリカ大統領になるかによってアメリカの経済政策は決まる。そのアメリカの政策によって我々の生活は重大な影響を受けるのである。

 また、遠い国の戦争は、自分達の生活に関わりないことのように思える。しかし、第四次中東戦争は、オイルショックとなって我々の生活を直撃した。ハイテク製品に囲まれて生活している我々は、希少資源の原産地周辺で起きた政変に無関心でいられないのである。経済は、政治に深く係わり合っている。

 国防の問題は、政治の問題であると同時に経済の問題でもある。戦前、軍事費が国家予算の40%以上も占め、国家経済を圧迫した。アメリカは、日本の軍事的圧力に対し、経済封鎖をもって対抗した。こうなると経済が逼迫して戦争となったのか、経済が逼迫させられて戦争になったのか解らなくなる。それも日本の軍事力の問題か、アメリカの経済封鎖の問題なのかも判然としない。議論をすれば水掛け論になるであろう。
 古来より、戦費は、国家財政を圧迫し、経済を疲弊させる元凶なのである。戦争は、政治的破綻が原因なのか、経済的な破綻が原因なのか。微妙な問題である。




                    


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