経済と国家


 経済には、流れがある。物の流れ。人の流れ。金の流れ。情報の流れ。この流れを堰き止めないかぎり、経済は、何処にでも侵略してくる。そして、国家は、経済の流れに翻弄されることになる。経済は、もう一国で片づく問題ではない。特にも、必需品の自給率の低い我が国が、鎖国のような政策をとることは、自殺行為に等しいのである。

 世界の人口は、十九世紀の初期は、約九億人だったと推定される。そして、二十世紀の頭で、約16億人、それが2000年には、61億人を超えようとしている。1950年以降、ほぼ10年に10億人ずつ増えている事になる。(「飢餓と飽食」荏開津典生著 講談社メチエ)将に爆発的な人口の増加である。
 世界の人口が爆発的に増加している反面で我が国は、少子高齢化の問題に悩まされている。合計特殊出生率は、1974年に2.05というピークをつけてそれから減少し始め2003年現在で合計特殊出生率が1.29となっている。(厚生労働省「人口動態統計」)

 日本のエネルギーの自給率は、4%に過ぎない。(IEA「Energy Balances of OECD Countries 2000−2001」)また、日本の食糧自給率は、平成10年にカロリーベースで40%になり、それから平成十五年まで、連続六年間40%である。(農林水産省)これを他の国と比べるとオーストラリア230%、アメリカ119%、フランス130%、英国74%と最低のレベルにある。
 日本の食糧自給率の低下は、終戦直後のアメリカの食料支援による食生活の変化が影響している。

 国防費をどれくらい認めるべきなのか。日本では、防衛費はGDPの1%以内と言うのが一つの目安とされてきた。何から国を護るのか。自衛隊は、違憲ではないのか。国防費を巡っては常にそれが論点となる。
 ソビエトの崩壊は、アメリカの軍拡競争に敗れた事も一因だと言われている。
 戦前の日本では、国防費が財政を圧迫していた。例えば、昭和11年度予算は、総額22億78百万円の予算の内、軍事費は、10億円を上まわるものだった。国防費を削減した高橋是清は、陸軍の若手将校に暗殺された。

 1950年6月25日北朝鮮軍10万が38度線を突破し、朝鮮戦争が勃発した。一時北朝鮮軍は朝鮮半島全土を支配下に入れたが、その後、国連軍は、一時、中朝国境付近まで巻き返したが、中国軍の参戦によって38度線まで追い返され、その後38度線を挟んで膠着状態に陥り、1953年停戦した。

 1971年8月15日(日本時間1971年8月16日)当時のニクソン大統領により、テレビとラジオに全米に向けて声明が発表された。主な要点は以下の通り。減税と歳出削減 。雇用促進策。金ドル交換停止 。10%の輸入課徴金の導入 。特に、メインは金ドル交換停止である。(フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)

 エジプトとシリアの連合軍は1973年10月6日に奇襲を行い、当日はユダヤ教の最も重要な休日であるヨム・キプール(贖罪日)であり、イスラエルの警戒が緩む日でもあった。シリア軍はゴラン高原のイスラエル拠点を攻撃し、エジプト軍はスエズ運河およびシナイ半島の拠点を攻撃した。三週間に及ぶ戦闘の後、イスラエル国防軍はアラブ軍を退け、結局元の国境線を越えて進出することとなった。(フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)

 為替レートに関する合意が、1985年9月22日、アメリカ合衆国ニューヨークの「プラザ・ホテル」で行われたG5(先進5カ国蔵相・中央銀行総裁会議)により発表された。(フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)

 高級志向の生活様式になれた家庭やオフィスといた民間部門のエネルギー需要は、継続的に増加してきたが、2001年度は冷夏暖冬の影響で全体として減少した。(資源エネルギー庁(編):エネルギー2004、潟Gネルギーフォーラム)

 1992年の夏頃、ナタデココが流行って、原産地のフィリピンでナタデココが品不足に陥った事がある。しかし、熱しやすく日本人の通例で、ナタデココの品不足も一時的で、むしろ、需要をあてにして増産した農家が痛手を被った。

 真夏の電力需要は、冷房の使用によって夏場の電力使用量は増大する。その時期に高校野球が重なると電力の使用量が急激に増えてピークを迎える。2002年には、原発スキャンダル問題も重なって、大停電を起こす危険性があった。

 地球の温暖化によって海水面の上昇が懸念されている。その為に、COの排出量の規制が世界的問題になっている。

 2004年11月2日接戦の末、アメリカ大統領にブッシュ大統領が再選された。

 2005年8月末、巨大ハリケーンがアメリカ、メキシコ湾岸に上陸し、石油精製設備に大きな被害を与えた。

 財政赤字の悪化が懸念され。特殊法人の民活化が政治問題となっている。郵政の民営化を巡っては、衆議院が解散され、小泉首相率いる自民党が大勝した。

 あの銀行は、危ないという噂が立ち、取り付け騒ぎが起こった。その為に、多くの銀行が、操業停止に追い込まれた。

 若者の多くが、就職するのを嫌がり、フリーターやニートが増え。引き籠もりも増加して社会問題化している。

 女性の高学歴化とそれに伴う社会進出が一般的になってきた。それに伴い、働く女性にとって出産や育児の負担が深刻な問題となってきた。その為に、幼保一元化が計られることになった。

 バブル崩壊後、国民皆が、景気の先行きに不安を抱き、金利が下がっても投資を控えた。その為に、地価の下げ止まりがきかず。また、株は暴落した。
 世の中、不景気になるとディスカウント店や100円SHOPのような店が流行る。100円SHOPは、デフレを象徴したような商売だ。本来の商売は、商品があって価格が決まる。それに対し、100円SHOPは、最初に価格ありきだ。つまり、貨幣価値が商品価値を決めるのである。

 人生設計における三大資金は、教育と住宅資金と老後資金である。なかでも、教育費は、受験戦争が過熱し、誰もが塾に通ったり、家庭教師をつけるようになった結果、家計に占める割合が増大した。

 これまで述べてきたことは、全て経済の問題である。
 多くの人は、経済というとインフレとか、デフレ、物価、金利、在庫、景気、恐慌と言った言葉を思い浮かべるかも知れない。しかし、これまで述べてきたようなことは、れっきとした経済の問題である。むしろこれまで述べてきたことの方が経済に実際に与える影響は大きい。なぜならば、インフレやデフレといった景気動向は、結果なのに対し、国民の生活は、原因だからである。経済は、結果ばかり追っても良くならない。その結果を招いた原因が問題なのである。その原因の多くが国家の在り方や政策に起因する。しかも一国だけで片づかない問題が増えているのである。

 国家とは何か。経済において国家が果たす役割とは何か。その点を明らかにしないかぎり、国家と経済の関係は明らかにならない。経済における国家の重要な役割、機能は、財の再配分と市場の管理、そして、行政サービスである。

 貨幣の働きを見ないで貨幣の動きばかりを問題にしても、経済の実態は見えてこない。同様に、財政の働きを見ないで、財政赤字という現象ばかりを問題にしても問題は解決できない。
 財政赤字を問題にするが、財政の果たす機能を明らかにした上で、財政赤字の問題点を検討しなければ、正しい対策を立てることはできない。

 事後に分析するのは容易い。しかし、大切なのは、事前に対処することである。しかし、事前に対処したことは、問題が表面化しない限り、評価されない。経済は、うまくいって当たり前の世界なのである。

 国家の果たす役割の中に、富や財の再分配機能がある。極端な財の偏在は、富の一方向的蓄積を促す。富の一方向的な蓄積は、社会に階層を生み出し、その階層が固定的になると特権階級を派生させ、社会の平等性を損なう。階級制度は、社会構造にストレスを生じさせ、それが高ずると社会構造を維持できなくなる。故に、財の偏在を是正する必要が生じる。そして、それが、国家の重要な機能となるのである。

 経済は、金だけの問題ではない。金の背後にある人間の生業(なりわい)が問題なのである。なぜ、国の景気が良くならないのか。それを知るためには、国民一人一人の生活や習慣の変化を読みとらなければならない。
 仁徳天皇が竈の煙から経済状態を察し、免税処置を講じたようにである。
 国民の生活の変化を読みとり、国民が生活しやすいような施策を採るのが、国家の役割なのである。





                    


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