76、統計とは(統計を考える)



確率・統計を活用すべき時は、はじめに目的を明らかにする。


確率や統計を活用する場合は、最初に目的を明確にすべきである。
なぜならば、目的によって初期設定がされるからである。
確率や統計を使う場合も、確率統計によって説明を受ける場合も目的を持つ必要がある。

確率や統計の結果は、設定の仕方の支配下にあるのである。初期設定の仕方で、確率や統計の展開は違ってくる。
初期設定の仕方によって調査の仕方も手法も、方程式も変わってくる。

例えば、設定の仕方で中心の位置も運動も全く違って見える。それは認識の仕方。
同じ空間でも、等間隔の表を基盤とした場合と対数表を基盤した場合とでは、違う位置と運動になる。
特に経済問題は、単利的現象と複利的現象として見るかによって結果は、全く違ったものになる。

経営情報は、前提とする会計原則によって全く違った結果が出るのである。
例えば、世界基準とアメリカの基準、日本の会計基準は違う。日本の会計基準に従った計算したら黒字だったものが、アメリカの会計基準に従ったら大赤字だったなんて事が往々にして起こる。

この場合は、各々の会計基準に従った結果を見てみないと妥当性は判断できない。
アメリカと日本とでは会計基準の目的が微妙に違うのである。
どの様な考えに基づいて各々の国が会計基準を定めたかを確認する必要がある。

設定条件を規定するのは目的である。
故に、最初に設定を目的に合わせておく必要がある。
結果が出てから設定を作ったり、変えたら意味がないのである。

初期条件、初期設定が確率や統計では重要となる。
統計や確率は、後付けの説明では、本来の目的は達成できない。

逆にいうと目的に沿って初期設定を明確に設定する必要がある。
結果が出てから目的を設定するのでは、統計や確率の効用は半減すると言っていい。いずれにしても目的を明確にしておかなかったら話にはならないのである。

初期設定、前提を確認しておかなければ結果の妥当性は判断できない。そういう意味では、統計や確率は主観的な数学と言っていい。設定いかんによっては答えも違ってくるのである。
故に、確率、統計は、初期条件、初期設定に十分に注意を払い、前提条件を確認する必要がある。

何のために、体温だの、血圧だの、血糖値だの、コレステロール値だのを調べるのか。健康診断のためなのか、それとも何らかの症状が出たのでその症状の原因となる病気を明らかにする為なのか、それを明確にしなければ、体温や血圧を測る意味はないし、結果を活用する事もできない。個人の体温や血圧も統計の一種である。
だから、統計や確率を学ぶ時は、なぜ、何を明らかにしようとしているのか、その目的を明確にする必要がある。
目的を明らかにしないで、平均値がどうの、中央値がどうの、偏差値がどうの、分布がどうのと教えたところで、教わる者は意味がわからない。

また、確率や統計を学習させる際は、身近で切実な問題を取り上げるべきなのである。
成績の偏差値などは、最も、切実な問題であるはずなのに、偏差値だけが独り歩きし、学生の成績の位置づけ、序列付け、進学の際の基礎資料としか使われていないのは残念な事である。
偏差値を用いるのならば、適性や潜在的能力、学習の為の指標といった学生の可能性を引き出すための資料として使われるのならば統計本来の力をより発揮する事が出来るように思う。
確率や統計というのは、目的をあからさまにする。結局、現在の教育の目的は、試験による学生の序列付けなのである。
もし、人材の育成というのならば、調査項目や調査手段が違ったものになる。
現に、多くの国では試験の結果だけでなく、多様な要素を評価システムの中に織り込んでいる。

学生が偏差値の事で問題とするのは、自分がどの学校に入れるかがわかればいいので、結局、偏差値の意味も解らないまま、数字に踊らされているだけなのである。偏差値によって人生を左右されるというのに、統計や確率の事を学んでいるわけではない。それは、学生が偏差値の目的が学生の序列を決める事だと考えているからである。

教育の目的を明らかにしない限り、統計を正しく活用することはできない。本来の目的を逸脱したところでデータが活用され、教育本来の目的を見失わせてしまう。そして、偏差値が独り歩きしだし、教育の本質まで歪める結果を招くのである。

結局、現代の教育は、試験のための教育になっている。試験は本来、データを集めるための手段なのである。手段が目的を歪め支配する典型的な事例になっている。本末の転倒である。試験制度に囚われている限り、いくらゆとり教育などと目先を変えても教育本来の目的を取り戻す事はできない。




ベイズ統計
確率と統計
確率と統計(教育)



参照
「道具としてのベイズ統計」 涌井良幸著 日本実業出版


       

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