76、統計とは(統計を考える)


時系列分析によって何を求めるのか


時系列分析によって何を求めるのか。

人は生きていかなければならない。将来に不安があったら安心して生活していくことができない。
今、間違った判断をしたら将来取り返しのつかない事になりかねない。
過去の出来事、経験から学び、正しい判断を下す。そのために、時系列分析は不可欠なのである。

時系列分析によって明らかになるのは、変化の諸相である。
いろいろなでは事がどのような変化をしていくのか。その様相を明らかにするのが、時系列分析である。

時系列分析するためには、時系列データが何を意味し、何を表しているかを知る、そして、時系列データの限界を知る事である。

時系列分析で注意しなければならないのは、変化の形は、一定、一律、一様ではないという事である。すなわち、変化の形は、不変的ではなく、変化も絶え間なく変わっているというとである。
ある期間は、周期的規則的な動きをしたかと思えば、次の瞬間には、直線的な変化に変わったり、また、何の脈絡もない不規則な変化に変わったりする。

自動車の動きを追跡するとある時間は、加速度運動をしたかと思えば等速に変わったり、まっすぐ走っていた思ったら、急カーブを描いたり、急停車したりと目まぐるしく変化している。
自動車の軌跡を追いかけてみても自動車の仕組みが明らかになるわけではない。自動車の動きだけを見て自動車の仕組みや原理を理解するのは難しいというより不可能に近いのである。
ただどの様な環境、状況、前提によって自動車はどのような動きをするかがわかる程度と理解しておいた方がいい。
変化が起こる環境、状況、前提を理解せずに、変化を一意的に理解しようとするのは危険な行為である。

変化そのものに目を奪われると変化の原因は掴めなくなる。
時系列分析をする目的は、変化を引き起こしている要因や構造、仕組みを解明する事にある。

時系列データを分析する場合、有効な期間、範囲が重要になる。期間、範囲は、時空間を構成する。
時系列分析を行う場合、時空間の単位をどうするかが、重要となる。

時間の単位は等間隔でいいとは限らない。時間の働きの設定の仕方によって、また、目的によっても、対象によっても変化の単位は伸び縮みするからである。

時系列分析をする主たる目的は、将来を見通し、予測を立てる事である。
その為に、変化を引き起こす因果関係を知る事である。

変化は一様ではない。全ての変化は、線形関係で捉える事が出来ない。また、周期で規定する事もできない。
そこが問題なのである。

時間の単位を設定する場合、一定の規則性のある部分とそうでない部分とを分別する事が重要となる。

時間や位置によって確率分布が変化しない確率過程を定常的仮定とする。時間や位置による一定の形の確率分布わもたない確率過程を非定常的過程とする。
変化の背後の力関係、仕組みを明らかにするためには、定常的な変化の形と期間が重要な鍵を握っている。

まず変化の形を見る。
時間軸を基礎とした推移の形と時間の働きを陰とした構成比をみる。次に、変化を構成する個々の要素間の相関関係を調べる。相関関係に因果関係があるかどうかを分析してみる。
変化の背後でどのような力が働き、どの様な仕組みが作用しているかを解明するのが統計の目的の一つである。

物理的な現象に対して統計が対象としている現象、社会現象や経済現象、自然現象等の変化は、多くの場合きれいな形、単純明快な形をしているわけではない。
多様で複雑な形をしているのが常である。

変化から何を読み取るのか。一つは時間の働きである。時間価値が変化に対してどのような影響を及ぼしているのか。これは変化率として現れる。代表的なのは、物価上昇率や金利である。
第二は、変化の背後にどの様な力が働いているのかである。第三に、変化を引き起こしている仕組みである。
そして、このような変化に働く諸々の作用を明らかにすることで変化の先を読み通し、変化を制御する事が、時系列分析の最終的な目標である。

何が原因なのかがわかれば、事前に対処の仕方を準備しておく事が出来る。また、法則がわかればその法則に従っていろいろな仕組みを組み立てる事さえできる。
その為には、現象の背後にある因果関係を知る必要がある。

最終的には因果関係を明らかにすることだが。現在では、因果関係を明らかにする前に相関関係を解明する事が優先されている。

個々の要素の推移が時間の経過とともにどのように形を変えていくかを見る。そして、次に個々の要素間の相関関係を見てみる。問題なのは、変化の先を見通す事なのである。

何によって変化を引き起こされているのか、そして、引き起こされた変化の結果はどのようになるのか。
それを知る事で、変化にが引き起こす結果に対して、どのように対処するかを、あらかじめ準備する事が可能となる。

なぜ相関関係が重視されるのか。
それは、原因と結果が一対一に対応しているとは限らないからである。
物理的現象ならば、水を加熱すればお湯が沸くと言った原因と結果が一対一に結び付けることが可能である。

売上の予測を立てて生産計画を作り、そのうえで投資計画を作成する。投資計画に基づいて資金計画を作り、それによって資金調達をする。これら一連の仕事の源に売上予測、生産予測、投資予測、資金予測などの予測がある。時系列分析は、これらの予測の礎となるのである。最初の売上予測が大幅に外れればその後の全ての計画が台無しとなる。
この様な予測を立てる手段の一つが時系列分析なのである。

しかし、どの様な要因で売り上げが上昇するかは、例えば安くすれば売り上げが上がると単純に結びつけるわけにはいかない。
だからとりあえず原因かどうかは、わからないが一つの事象と連動して動く事象があれば、その二つの事象は、何らかの相関関係があると判定するのである。

要するに変化の方向がとりあえずは見極められれば良しとするのである。
ただ、相関関係を知っただけでは、法則を見出し、仕組みにまで昇華させることはできない。
故に、最終的には因果関係を明らかにする必要があるのである。

表面に現れる現象は、単一の原因によって引き起こされるのではなく、複数の要因の働きが複雑に絡み合って引き起こされている場合が多い。
故に、状況によっては多変量解析を用いる事も有効である。

結局、時系列分析に求められるのは予測が可能か否かである。




ベイズ統計
確率と統計
確率と統計(教育)



参照
「道具としてのベイズ統計」 涌井良幸著 日本実業出版


       

このホームページはリンク・フリーです
ページの著作権は全て制作者の小谷野敬一郎に属しますので、一切の無断転載を禁じます。
The Copyright of these webpages including all the tables, figures and pictures belongs the author, Keiichirou Koyano.Don't reproduce any copyright withiout permission of the author.Thanks.

Copyright(C) 2017.7.18 Keiichirou Koyano