構     造

サブ・プライム問題について

 私は、サブプライム問題は、現象論的な対処療法では解決できないと考える。なぜならば、典型的な構造問題だからである。(2008年9月16日)
 サブプライム問題は、一種の通貨制度の崩壊である。金融不安は、その結果に過ぎない。原因は、信用制度にある。原因から治さないかぎり、根治できない。
 サブプライム問題のキーワード、住宅ローン、証券化、信用制度である。
 紙幣は、元々、証券が発達したものである。紙幣が創造されると、紙幣は、貨幣価値とそれと同量の債務と債権を発生させる。
 紙幣は、一種の証券であるから、市場に流通するようになり、債権を背景にして、貨幣としての効力を発揮させる。この証券は、元々は、債務、即ち、借金を根底に持っている。つまり、債務の信用を根拠にして、債権としての働きをするのである。
 債権は、流動性を持つと現金と債務を派生させることが出来る。この様にして信用制度の基盤は、形成されるのである。
 債務の信用が保たれている内は、紙幣は、貨幣としての働きを果たすが、債務の信用が失われると信用システムが土台から崩れてしまうことになる。
 サブ・プライム問題は、住宅ローンという債務を基礎とした信用システムの崩壊なのである。これを根治するためには、信用システムそのものを立て直す必要がある。
 サブ・プライム問題の構造は、先ず土台の住宅ローンという債務の信用が失われたことにある。
 もう一つ、重要なのは、悪質の証券が流通したと言う点である。悪貨が、良貨を駆逐したという典型的な例である。つまり、土台が腐っている上に、信用システムを支える柱が朽ちたという事である。
 故に、第一に、基礎固めからはじめなければならない。この場合のキーワードは、与信である。つまり、債務の信用を取り戻すことである。
 債務の信用を取り戻すという事は、住宅ローンの信用を取り戻すことを意味する。むろん、その為には、住宅ローンの土台にある住宅市場を建て直すのも一つの手段であるが、例え、住宅問題が解決できたとしても、債務の信用を取り戻せるとは限らない。
 むしろ、債務の信用を回復することが先決だと思われる。その為には、債務の買い取りや肩代わりによって、債務そのものの返済を保証することも一つの手段だと考えられる。何れにしても、原因は、住宅市況でなく。信用システムの土台である債務の与信の問題なのである。
 もう一つは、悪質な証券を切り分けることである。つまり、悪貨と良貨とを分離する事である。悪貨と良貨を判定する基準は、元々、証券は、数式的に作られた物であるから、、数式から基準を割り出すことが可能だと思われる。
 金融に関しては、金融不安の拡大を最小限に抑えることである。金融不安の問題は、金融市場の規律が失われることである。危険なのは、金融不安が拡大して他の信用システムまで波及することである。その為には、緊急処置的な対策もやむおえないと私は、考える。ただ、金融不安というのは、あくまでも、結果として現れた現象に過ぎない。原因を明らかにし、本から断たない限り、例え、症状は軽減されたとしても、何れは、何等かの問題を引き起こすことになる。それも予測できないようなところから問題が噴き出す危険性がある。再発も怖い。
 住宅市場(これは、日本のバブル崩壊後の例を見ても解るが)が、好転したとしても住宅ローンを基礎とした債権市場の建て直しに直接結びつくとは限らない。
 いろいろなバブル現象は、債権と債務の相乗作用によって引き起こされていることがわかる。つまり、バブルを上昇させるのは、一見債権市場の高騰に見えるが、その背後に債務が働いているという事である。債権が高騰するときは、それと、同規模の債務が派生していると考えるべきである。その債務が債権価格を上昇させるが、一転して、下降局面になると債権の価格を押し下げる方向に作用する。それが、過剰な値動きを引き起こすのである。これは、市場の当事者ではどうにもならない圧力なのである。債務があるために買い。債務があるために、売るのである。

 機関投資家は、資金運用を通じて金利以上の収益をあげる必要がある。しかし、市場が過飽和な状態になると企業は、なかなか収益をあげられなくなる。そうなると、機関投資家は、資本市場や金融市場を操作することによって利益を稼ごうとする。それがバブル現象を加速することにもなる。

 今の金融システムは、丁度、底の抜けたバケツのようなものである。流れを堰き止めようとしても止まるものではない。抜けた穴を塞ぐような政策こそ求められているのである。

 サブプライム問題を見ても解るように、現代社会は、ある意味で土地本位制度のようなところがある。ただ、その土地の価格水準が必ずしも安定していないところに問題があるのである。

 現代社会で、問題なのは、経済的問題を卑しめることである。経済を罪悪視する傾向はいまだに残っている。その反面において、金銭に対する節操がない。つまり、経済的倫理観が確立されていない。一方で金を馬鹿にしながら、一方で金儲けのためならば手段を選ばない。だから、経済がよくならない。
 経済の問題は、企業が儲からないように出来ているという事です。財政も赤字にならざるをえない仕組みになっている。つまり、経済の仕組みを正直者が馬鹿をみないような、真面目に働いている者が損をしないような仕組みに組み替えることなのである。

 問題なのは、価値の一般的前提である。価値の一般的前提とは、価値を成立するための一般的前提条件である。つまり、どの様な前提の基に、どの様な価値を形成したかである。それによって、その後の論理の展開が確定する。
 例えば、現在のサブプライム問題を例にとると、サブプライム問題が生じた前提条件は何かである。サブプライムローンの基盤となる住宅ローン何を前提とし、何を担保していたかである。
 住宅ローンは、本来何を前提とするのか。地価なのか。返済能力なのか。ローン、即ち、借金は、本来、返済能力を土台にして設計されるものである。
 返済能力には、所得と資産がある。通常は、返済能力は、所得を基本とする。しかし、不景気になると資産、即ち、担保力を問題にするようになる。その事によって重大な齟齬か生じるのである。地価が下落したとたん、新たな融資が出来なくなったり、また、一括返済を求められると、充分に返済能力があり、それまで、返済を滞った事もない者まで、生活や経営が破綻してしまう。しかも、その時には、担保力まで低下しているのである。最悪の時に最悪なことを要求する。だから、事態はますます悪化するのである。それは、金融が金融本来の機能、金融機関が存在するための前提を忘れてしまうからである。

 最初に、何を前提とし、その前提とのどこが変化し、どこが崩れ、どこが問題なのかを正確に見極めることからはじめる必要がある。

 作用には、常に、反対の作用が隠されている。プラスには、マイナスの、入には、出の、陰には、陽の作用が働く。この反対の作用が及ぼす影響を常に明らかにしながら対策を立てる必要がある。

 一つの取引には、反対取引がある。
 貸出は、相対に借入がある。そして、借入の額は、貸出の額と等しい。貸出と借入が一組になって取引は成立する。そして、取引の時点で成立する貨幣価値が現金である。
 貸付金は、借入金でもある。つまり、金融機関の貸出金は、融資され側から見ると借入金になるのである。借入金、即ち、債務であり、負債である。この負債の相対にあるのが資産である。この借入金の延長線上にある資産の質が問題なのである。

 債権は、債務がある。債権とは、反対側に債務がある事を意味する。
 債権の問題は、債務という問題からも捉え直す必要がある。
 経済的事象には、名目的な表現と実質的な表現がある。名目的な表現とは、外形的な表現である。それに対し、実質的というのは、内容的な表現である。
 名目的価値は、固定的、あるいは、不変的な絶対額として表現される。それに対し、実質的というのは、流動的、あるいは、変動的な相対額として表現される。つまり、名目的価値は、唯一なものであり、実質的価値は、多様なものとなる。
 不良債権というのは、資産と負債の名目的な価値と実質的価値が乖離している状態によって引き起こされるのである。つまり、不良債権というのは、債権者から見た場合であり、債務者から見ると不良債務を意味するのである。
 債権は、資産を形成し、債務は、負債を構成する。不良債権を分析する場合、資産の構造と負債の構造を分析する必要がある。
 資産の名目的価値は、取得原価である。そして、実質的価値は、時価である。
 名目的価値とは、取引という実体に基づく。取引が実現したかどうかが名目的価値の根拠となる。それが、取得原価、歴史的価値である。また、資産は、資金を調達した時点で名目的価値によって担保される。
 実質的価値は、基本的には時価を指す。しかし、時価と言ってもいろいろある。一つは、市価である。市場で実際に取り引きされている価格である。実際に市場で取り引きされていると言っても時間や場所によって市場価格は絶えず変化している。第二に、清算価値である。第三に、更新価値である。第四に、仕入れ原価である。第五に、販売価値である。第六に、路線価のような法定価値である。第七に、残存価値である。残存価値の何かは、マイナスのものもある。そして、何れも認識の時点に影響されて計算方法が違ってくる。
 どの値を選択するかは、認識の目的と前提に基づいて、当事者間の合意によって決まるのである。
 この資産に対応するのが、負債、あるいは、資本である。負債の名目的価値は、元本である。そして、実質的価値は、返済額である。返済額は、返済総額と実際の返済計画の二つがある。また、資本の実質的価値は、株価と配当を合算したものである。しかし、実際には、株価と配当は区分して計られる。
 名目的価値が実質的価値を上回っている場合、未実現利益、含み益がある。それに対し、名目的価値を実質的価値が上回ると未実現損失、つまり含み損が発生する。含み損がある資産を不良債権というのである。
 どの様な状況を前提とするかによって採るべき政策は、制約される。
 市場が拡大し、経済が成長している状況では、実質的価値は、名目的価値を上回って表現される。それに対して、市場が収縮し、経済が成熟してくると実質的価値は、名目価値に対し、基本的に下回って表現される。
 会計上は、名目的表現を原則としている。それに対し、資金の流れは、実質的表現を重んじる。
 資産は、会計上、名目的に表現されるが、資金的には、実質的な計測される。即ち、担保価値を基礎として測られる。それに対して、負債は、原則、名目的価値と実質的価値が一体である。
 負債の構造は、元本と金利となり、返済額は、元本の部分と金利の部分から成る。ただし、元本の部分の返済額は、貸借上も損益上も現れない。資産価値は、貸借上も損益上も名目的な価値しか、本来、表現されない。そして、資金は、資産は、実質的部分を、負債は名目的な部分を基礎としている。
 これが前提である。
 不良債権で問題になるのは、負債で言えば、元本の部分であり、資産で言えば、担保の部分なのである。
 市場が拡大すると元本の部分が拡大するから、調達力が高まり、一転して市場が縮小すると元本の部分が圧縮され、返済圧力が高まる。
 しかも、資金の調達力は、資産の担保力を裏付けとしているために、市場が拡大し始めても資産の担保力が回復しないかぎり、新たな資金調達は阻害されることになるのである。また、銀行は、貸し渋っているのではなく。担保に基礎を置いている限り、貸したくても貸せない状況に陥るのである。この場合、収益に基準をおいて事業を捉え直す必要がある。つまり、担保還元方式から収益還元方式に基準を変える必要があるのである。
 不良債権を構成するのは、資産担保価値、即ち、名目的価値である。
 故に、収益の見通しが立った時点で、この資産価値の修復を画策する必要がある。しかし、資産価値の修復は簡単にはいかない。なぜならは、資産価値は、外部要因だからである。
 資産担保価値を修復する必要がある。名目的価値の変動は、経営者にとって不可抗力である場合がほとんどである。しかも、名目的価値はリセットする事が原則的にできない。結局、名目的価値が回復するのを待つしかない。

 名目的価値と、実質的価値は、常に乖離している。そして、名目的価値が実質的価値の乖離は、資金に流れに影響を与えている。実質的価値が名目的価値を上回っている時は、資金の調達力が向上する。実質的価値が名目的価値を下回ると返済圧力がかかる。

 市場が拡大、発展している時は、名目的価値を上回るように実質的価値が形成される。しかし、成熟期になると実質的価値が名目的価値を下回るようになる。
 それを資金の流れから見ると市場が拡大成長している時は、資金は、調達側に流れ、市場が縮小すると資金は、返済側に流れる。それが、企業の資金調達を絶えず圧迫するようになるのである。
 また、名目的価値は、蓄積、累積する傾向がある。その為に、慢性的な債務超過に陥りやすいのである。
 この様な状況を打開するには、何等かの形で名目的価値を解消する方策を準備する必要がある。

 上昇局面では、名目的価値、絶対額が重視され、下降局面では、実質的価値、相対額が重視される傾向がある。

 重要なのは、前提が変わっていることである。資金を調達した時点において何を前提としたかである。本来、事業は、事業収益を前提として資金を調達している。故に、貸借は、名目的価値を前提として取引が成立するのである。状況が変化したからと言って名目的基準を実質的基準に切り替えるのは、ルール違反である。

 先ず収益を確保できるようにするのが先決である。次ぎに、資金の流れを見る。指して長期的展望に立って事業観を確立する必要があるのである。その事業観基づいて長期的に資産価値を見直す必要がある。
 事業は、本来継続を旨とし、長期的均衡を前提としている。それに対し、目先の収益や資産価値をもって事業の価値を推し量ろうとすることに無理があるのである。肝心なのは、事業目的であり、社会的機能、役割である。その点を考慮し、適切な方策を講じることが金融機関や行政に求められるのである。

 不良債権というのは、貸し手側から見ると、回収が困難な債権を意味する。不良債権を借り手側から見ると返済が困難な債務である。つまり、不良債務である。

 不良債権を発生させている原因は、貸付金の劣化である。

 問題は、貸付金の質の低下にある。
 貸付金の質の低下は、借入金の質の低下を意味する。借入金の質の低下とは、借入によって実現した価値の劣化である。借入によって実現した価値の劣化とは、借入によって得た生産手段が生み出す所得の減少と借入によって獲得した現在的価値の低下である。つまり、借入金の質の低下は、収益の悪化と資産の劣化に原因がある。
 収益の悪化と資産の劣化は、収益と資産の質に依拠している。

 貸付金、即ち、投融資には、経常投資と資本投資とがある。
 経常投資は、生産手段に対する投資と費用からなる。経常投資は、収益に還元される。収益は、企業のおける経済活動の源とみなされる。

 不良債権、債務で重要になるのは、何によって企業は、成り立っているのかである。企業を成り立たせているのは、資金の流れである。
 不良債権、不良債務が問題になるのは、資金の調達が困難になるからである。
 資金が調達できなければ、企業経営は継続できなくなる。逆に言えば、何等かの形で資金を調達できれば企業は継続できる。資金の供給を断たれると、企業は、存続できなくなる。その意味では、企業は生き物なのである。

 企業の経営活動は資金によって成り立っていると言える。どんな形にせよ、必要な資金を調達することが出来れば企業は経営活動を継続できる。資金調達、言い換えると、資金を生み出しているのは、融資と、投資と収益である事を忘れてはならない。

 その中で収益は、企業が、経営活動によって生み出す価値である。収益は、費用と利益からなる。通常は、企業収益によって金利が支払えれば問題とならない。しかし、企業収益が悪化して金利が滞るようになると資金の調達が難しくなる。即ち、収益による資金調達が難しくなる上に、借入や投資による資金調達が困難になるからである。そして、更に元本に対する返済圧力も強くなる。しかも、元本の返済は、損益上も貸借上にも表れない。

 何が収益を、悪化させたのかが、重要なのである。そして、収益の悪化が、一時的なものなのか、恒常的なものなのか、構造的なものなのかが問題なのである。ところが、その様な原因や前提を確かめずに結果だけを問題にする傾向がある。

 また、融資は、実際には、金利に対する支払い能力、収益力ではなく。元本に対する返済能力、担保力を問題にされる場合が多い。結局金の出しては、結果しか評価しない。その為に、事業内容が正当に評価されないのである。

 費用は、固定費、変動費からなる。また、原材料費、人件費、その他、経費からなる。費用は利益の元になる部分であり。収益は、費用に利益を加算したものである。収益が悪化した場合、これらの中のどこに収益を悪化させた要因があるのかを経営者も金融機関もよく見極める必要がある。経営を悪くしようとする経営者は、詐欺師でもない限りいないのである。

 また、貸付金の劣化の原因の一つは、レパレッジにある。

 借入金にサブプライムローンや証券が含まれている。サブプライムの問題は、地価の下落によってサブプライムローンの回収力が低下したことと、サブプライムを証券化したことによってリスクが増幅され、かつ拡大した点にある。
 サブプライムの貸し倒れがどれくらいあり、しかも、レパレッジをどれくらい効かせているかがハッキリしないことが問題なのである。

 実質的資産価値が重要になる。つまり、実物経済との接点をどこに求めるかが鍵を握っているのである。

 貸付金の劣化を招いているのは、資金の回収圧力である。資金の回収圧力の原因は、収益の悪化と資産価値の劣化である。

 例えば住宅ローンの構造であるが、第一に、住宅ローンの貨幣価値総額、第二に、住宅ローンの資産、第三に、住宅ローンの負債からなる。
 住宅ローンそのものの構造は、元本と金利からなる。住宅メーンの名目的価値は、この元本と金利を足したものである。
住宅ローンを成立させている要素は、支払い能力と返済計画である。支払い能力は、住宅ローンの持つ資産価値と債務者の将来の収入を意味する。返済計画は、返済期間と月々の返済予定額を基礎として計算される。
 
 住宅ローンの資産というのは、住宅の持つ価値、土地と建物の価値である。住宅ローンの負債というのは、元本と金利と期間からなる。

 返済額は、その時点時点における貨幣価値の実現を意味する。そして、返済額は、債権と債務の性格を反映する。
 返済額は、基本的に取引が成立した時点での負債額を基礎として算出される。つまり、返済額は、債権から切り離されたところで決定される。返済額の根拠は、債務者の支払い能力に依拠するのではなく。取引が成立した時点での借り手側から見て借入額、貸し手側から見て貸付額、融資額を基礎とするのである。そして、金利も基本的に取引が成立した時点における貨幣価値を基礎として算出される。
 さらに、返済額は、金利の動向によって連動して決まる。
 返済額は、地価の相場や景気、所得に連動していない。つまり、支払い能力は根拠とはされない。企業収益が悪化しても、また、失業して収入がなくなってもそれらは、原則として返済額の算出において考慮、斟酌されないことになっている。それが、借金の決まりであり、仕組みである。
 その為に、借り手側の都合に関係なく月々の返済が滞ると返済圧力が強まる。また、元本を保証しているのは、資産価値であり、主に、土地の価格である。の為に、地価の下落は、元本の返済圧力として作用する。しかも、元本の返済は、損益上も貸借上にも表れてこない。つまり、表面に表れない資金の流れである。資金繰り倒産の一番の原因でもある。

 債務の元となる負債は、固い数値として表現される。それに対し、債権の元である資産は、日々変動している。故に、資産の変動は、債務を梃子とした働きをする。資産価値が上昇しているときは、新たな信用を生み出す基礎となるが、資産価値が下降し始めるととたんに返済圧力して、また、回収圧力として作用する。それが資産効果、あるいは、逆資産効果と言われる現象である。 

 借入先の資産が拡大しているときは、資金を生み。資産が劣化すると回収圧力として作用する。回収圧力が極端に強まると資金が市場から吸い上げられ、流動性が枯渇してしまう。いくら市場に資金を供給しても資金が流れなくなるのである。

 返済、回収というのは、現在的価値の解消を意味する。つまり、負債の返済は、信用の解消、信用収縮を意味するのである。金融市場の内部運動である。
 よく儲けはどこへ消えたという人がいるが、それは、利益というものを理解していないが故の発言である。利益というのは、現金化されて始めて実現する。それまでは、通常、債権と債務という形で保持されている。債権が収縮すれば必然的に債務も収縮し、その間に得た利益も解消されてしまう仕組みになっているのである。
 つまり、決済というのは、債権と債務の解消を意味するのであり、それは、信用収縮を意味し、現金価値の減少を意味するのである。

 株で、何億円、儲けたと言ってもそれを現金でもっているわけではない。通常、株という債権で所有している。儲けは、株を売って現金化した時に実現する。株を売れば、株価は下がる。株が下がれば、必然的にそれまでの儲けも解消されてしまうのである。

 重要なのは資金の量よりも資金の流れる方向である。資金の流れが回収される方向に向かうと資金の流通は阻害され、貸出が抑制されることによって新たな信用も創出されなくなる。










                    


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