標 準 化


時間的平準化


 市場経済においては、前提は常に、成長である。そして、それは市場経済に時間的価値が加わった時から決定付けられた原則なのである。

 時間的価値は、金利と利益と物価である。逆に言うと経済状態というのは、金融機関は、適正な金利を確保し、企業は、金利以上の利益をあげ、物価上昇以上の所得、即ち、賃上げが実現できればいいのである。

 現代経営における資金の活用には、初期投資と運転資金がある。そして、初期投資は、清算の利益によって解消され、運転資金は、期間損益によって解消される。解消とは、均衡を意味する。
 初期投資資金(イニシャルコスト)と運転資金ランニングコストがある。イニシャルコストは、費用における静的な部分を構成し、ランニングコストは、動的な部分を構成する。そして、初期投資は、長期的な時間軸において、ランニングコストは、短期的な時間軸において作用する。

 初期投資というのは、設備投資のような、事業基盤に対する投資を指して言う。それに対して、運転資金というのは、経営活動に必要な資金を指して言う。必然的に初期投資は、長期的資金に運転資金は、短期的資金となる。つまり、長期資金と短期資金の運用である。長期的資金は、基本的には、初期投資によって取得した資産や債権、資本に基づいて調達される。問題は、短期の運転資金である。

 市場には、長期均衡と短期均衡が混在している。しかも、長期的均衡を土台とした部分と短期的均衡を土台とした部分の働き、運動は、一様ではない。
 この長期均衡と、短期均衡の部分を標準化、平準化する必要性から、償却の概念が成立した。

 現金というのは、現在の貨幣価値を指して言う。資金を調達すると現在の貨幣価値が債権と債務を生むのである。その場で所得とするか、消費するか、それとも将来の所得とするか、将来の消費とするかの違いである。将来の所得とする物は債権であり、将来の消費とするものは、債務である。何れにしても資金を調達した時点では、現金、債権、債務は均衡している。

 現在の貨幣価値を実現した物である現金と貨幣が指し示す物から派生する債権、貨幣を調達したことから発生する債務、それらが成立した時点から現金、債務、債権は、独自の運動、変化をするようになる。つまり、時間軸が加わることによって現金、債務、債権は、独自の価値を形成するようになるのである。それがいろいろな現象を引き起こす。その変化をいかに有効に活用するかが、経営であり、また、最終的には、経済政策に繋がるのである。

 現金、債権、債務の問題は、価値の実現に要する速度の問題でもある。即ち、流動性の問題でもある。流動性が低ければ、それだけ、価値の実現に手間取ることになる。速度は、短期、長期という形で表現される。

 企業は、一時的な資金不足を起こす場合がある。短期資金の性格は、産業によって異なるが、短期資金の調達も何等かの債権を担保として行われるのが常である。その為に、所有する土地が担保とされる場合が多い。<
 地価は、資金調達に際し、資金の裏付けとなる。地価の水準の乱高下は、地価を担保にする企業の資金調達力に影響を与える。資金、即ち、貨幣価値は、それが創造された時に、債権と、債務を発生させる。債権の価値が下落すると担保不足を発生させる。

 借金も収入なのである。借金し続けられれば、収益がなくても企業も家計も財政も破綻しない。
 特に、非償却資産であり土地の債務が問題となる。超過した債務は地価の上昇で解消する以外にない。問題は、返済に対する原資をどこに求めるかである。つまり、返済に充てる現金をどの様にして調達するかである。ここでまた、債権と債務が生じる。
 この様に、資金を廻しながら債権と債務を均衡させ続けるのが経営活動なのである。

 現代の市場は、拡大均衡を前提にして制御されている。しかし、市場は、必ずしも拡大均衡するとは限らない。
 市場は、成熟すると縮小均衡に向かう。縮小均衡に市場が向かった時に、市場をどう制度的、構造的に制御するかが、経済を制御するための重要な要件である。





                    


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