86、経済破綻


「不発弾」「ハゲタカ」と言った小説や「東芝」「パナソニック」のノンフィクションを読みました。一体、あのバブルと言うのは、何だったのか考えさせられてしまいます。不良債権処理を担った多くの人は、悪意があったわけではありません。それなりの使命感もあったと思います。あえて、火中の栗を拾い、泥をかぶった人たちもいると思いますが、結果的に犯罪者扱いされたり、馬鹿者扱いされています。
私利私欲ではなく、会社や仲間を守るために、一時凌ぎ、緊急避難的にやった処置で、後々責任を問われる事になった人たちも多くいます。
その時その時は、誰もが最善を尽くしても結果的には、それが破綻に結び付いてしまう。理不尽な事です。理不尽だけれど黙って受け入れざるを得ない。
時代の流れには抗いようがありません。それでもそこから何かを学ばなければ明日はありません。
本当の事は、その根底にある真因を明らかにしなければわかりません。犯人探しをするばかりでは救われません。

なぜ、不良債権は生じたのか。
それは急激に地価が下がったからである。
一時凌ぎでやった応急処置、緊急避難的な事が当てが外れて長引き、傷を深めてしまい。最後にはにっちもさっちも行かなくなった。
ならばなぜ地価が下がったのかを明らかにしない限り、抜本的な対策は立てられない。

先日、与野党の総裁選挙の演説を聞きました。第三子が生まれたら一千万円の補助金を出す。財源は、子供国債にするとか、学費の無償化とか、一体、この国の財政はどうなっているのか、どうなるのか、唖然としました。財政問題は存在しないかの如く、政府の首脳陣もゴルフ場で夏休みをたっぷりとって英気を養ったそうです。この国の将来を憂えて暗澹たる気持ちになるのは、私だけなのでしょうか。
経済を表す指標の多くは、好転しているように見えます。しかし、水面下にある国債は、膨張を続け、金融機関は、青色吐息です。日銀は、出口戦略を示せないまま、なす術もないようにしか見えません。
在世が破綻した時、一番を煽りを受けるのは、金融機関でしょう。結局、政策のつけを払わされるのは、金融機関であり、最終的には国民です。
それでいて悪役にされるのも金融機関です。しかし、このまま手を拱いていては金融機関は立ち行かなくなります。金融機関が立ち行かなくなれば、この国は破産してしまいます。
財政赤字は、構造的問題です。家計、民間企業、財政、金融、海外部門の資金の過不足の問題であり、バブル崩壊後、民間企業が資金余剰部門に転じそれが財政の赤字を拡大しているのです。
財政を健全にするためには、枠組みを変える必要があります。歳入や歳出を抑えても枠組みを変えない限り、一時的で対処療法的な解決にしかなりません。財政の問題は、フローとストックの関係の問題なのです。
財政の中で資金不足部分、債務を民間に転移し、民間企業部門を資金不足部門にし、期間損益上によって長期的均衡をさせるような処置をとらない限り、財政の均衡は保てません。
財政を健全化する為には、先ず、出血を止めなければなりません。出血というのは、フローです。
フローの中で一番の問題は、社会福祉費です。この部分に民間に移転できないか。私は、そこに鍵があると思います。つまり、国民健康保険、医療保険、年金、介護保険の民営化です。健康保険や、年金、介護保険を分割民営化する過程で、事業計画を見直し収支が合う制度に変えていく必要があります。
健康保険、年金、介護保険は。もともと単年度主義には適合しません。長期的な事業計画の基に収支計算をすべき事業です。
そして、同時に国債を資本化して民営化した機関にもたせ、あるいは、それを担保にして国債を買い取らせるなどをして、債務を民営化した機関に転換させる。これは、実体のない企業を対象とした場合、危険な部分がありますが、年金機構や保険機構には実体があります。
また、介護制度と組み合わせる事で、年金資金の一定の運用先を確保する。
朝三暮四的な弥縫策では、本質的な問題解決にはなりません。
財政の枠組みを変える程の荒療治を覚悟しなければ、財政問題は解決しないと思います。
いずれにしても、財政が破綻する事態になれば、年金も保険制度も破綻してしまいますから、それくらいならば、民間への転換を考えた方が傷は小さくて済むと思います。
ただ、根本は、高齢者社会にどの様に対処していくかです。今の社会保険機構、年金機構が来たるべく高齢者社会に対応できるとは思えません。ビジネスとしてまた、業務としても非効率な部分が多すぎます。この点を改めなければ、単に公的債務を民間に置き換えただけになってしまいます。
大体現時点で民営化ができないとしたら、将来必ず破綻するのは必至なのです。
高齢化社会を前提とし、高齢者社会に順応しつつ、高齢者が安心して晩年を過ごせるような環境づくりのための投資先を構築する事だと思います。
財政が破綻する兆しは、景気がよくなる、経済指標の数値が好転する時です。物価も上昇し、所得も上昇し、失業率も低下する。しかし、それらは長期金利の上昇要因となり、長期金利の上昇は、財政を直撃します。その時にデフレ財政を獲れれば、政策金利を上げるのと同じ効果が得られますが、これは、増税以上に評判の悪い政策になると思います。
そうなると財政をファイナンスするしかなくなる。これは一時凌ぎにしかなりませんし、その先の物価を抑制できるかどうかは、賭けでしかありません。たとえ、物価を抑える事は出来たとしても金融機関がへったてしまいます。
何が引き金を引くかが重大なのではありません。何かのキッカケで事態が破綻してしまう状態である事が問題なのです。そのような事態を放置し続けている事が問題なのです。
今、金融市場は、パンパンです。
インフレレーションやデフレーションの原因の一つに過剰債務があります。過剰債務には、国債も含まれます。
過剰債務が資金の流れに影響するのは、金利だけでなく、返済額があります。資金の働きからして長期借入金の返済、資金の回収の流れの働きがフローに与える影響は金利以上に大きい場合があり。しかも、それが表面に現れてこないから怖いのです。
小説の「不発弾」がまさにこれにあたります。
インフレレーションもデフレーションも時間価値が絡んでいるという事を忘れてはなりません。人、物、金の過去の関係と現在の関係、未来の関係がインフレレーションやデフレーションには深く関わっているのです。
債務と債権の関係は、インフレーションにもデフレーションにも深く関わっている。ストックとフローの関係を切り離したらインフレーションもデフレーションも真の原因は理解できない。
しかし、日本経済を滅茶滅茶にするわけにはいかないのです。仮に財政破綻のような事態が予見できるのならば、少なくとも最悪の事態を想定して備えておくのは私どもの責務だと考えます。




       

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