84、リアルネットワーク


私は、現代人は、成長はよくて、成熟は悪いと決めつけているように思えてなりません。成長とか、成熟と言うのは発展の一段階を表しているのにすぎません。是か非かの問題ではなく、状況、前提条件の問題だと受け止めています。
日本経済は、成熟期に入って久しいと考えます。だからこそ、発想根本的に切り替えなければならないのに、いまだに成長第一主義に陥っているように思えます。
その為に、まだまだ技術革新、新規事業に囚われているように感じます。成熟期では、成長している部分ではなく市場を深化させる事が鍵を握っていると私は考えます。
通信産業と言うのは、情報ネットワークを基盤とした産業です。それに対して、プロパンガス事業に従事する者の多くは気が付いていませんが、プロパンガス事業と言うのは、人的ネットワークを基礎とした事業です。また、生活やライフラインの基盤を成す事業です。ネットワーク事業に携わる者は、新規とか、技術革新にばかりに目を向けるのではなく、生活空間そのものをどう設計するかをむしろ重視すべきだと考えます。そして、生活空間を深化させることこそ肝要なのです。
成長期から成熟期への変動期に求められるのは、量から質への転換です。
元来、通信事業は、情報ネットワークを基盤とした産業であり、情報化時代と言われる今日、次の時代をどうリードし、また、制御していくかが通信事業に携わるものの使命だと思います。少子高齢化が叫ばれ、生活基盤が大きく変わろうとしている今日、次の時代をどの様な社会にしていくのかその基本構想が問われています。ところが現実は、目先の利益に囚われて人としての志や未来に対する洞察力が忘れ去られています。
しかし、今は時代の分岐点にあります。
現在の経済は、ゼロ金利を前提として成り立っている事を忘れるべきではありません。
ゼロ金利と言うのは歴史的に見ても異常な事です。それを忘れてはなりません。
NTTドコモとソフトバンクグループのROEを比べてみますとNTTドコモのROEは、12.0%、売上高当期純利益は、14.2%、総資産回転率は、62%、財務レバレッジ135% 、それに対してソフトバンクグループのROEは、39.8%、売上高当期純利益は、16.4%、総資産回転率は、36%、財務レバレッジ687% となっています。これは、あくまでもゼロ金利を前提としている事を忘れるべきではありません。
純利益だけを見るとソフトバンクグルーブの方がドコモを上回って見えますが、営業利益率は、ドコモより小さく、アリババやスーパーセールの株の売却益によって純利益を押し上げているのである。
しかし、このような状態が維持できるのは、ゼロ金利、低金利だからです。金利が上昇し始めたら頓死してしまう危険性が高いです。財務レバレッジの数値が異常です。それは格付けが端的に表しています。
問題は、金利の動向ですが、そろそろ、私は、低金利時代も終焉を迎えつつある気がします。それは、第一の国債です。第二に、財政問題です。第三に地価。第四に経常収支と為替、第五に物価です。物価が上昇し始めたら長期金利を抑えようがなくなります。物価を抑えようとして長期金利を上げれば財政が破綻し、長期金利を抑えるためには、日銀が際限なく国債を買い続けなければならなくなる。こうなったら泥沼です。
問題は、このような混乱を生き抜く事と、潜り抜けた後にどの様な国を再建するかです。その時、待ち受けているのが高齢化社会です。
相場英雄の「不発弾」を最近読みました。日本そのものが「不発弾」を抱えているようなものです。今は表面何事もなく平穏無事に見えますが、一度、不発弾が破裂したら、日本は、未曽有の混乱に巻き込まれることは必至です。その時こそ、この国の指導者の真価が問われるのだと存じます。
そして、その時こそ我々のようなネットワークを基盤とした産業が鍵を握るのです。
私どもプロパンガス業界は、幸い人的ネットワークがあります。しかし、このネットワークを活用するための人的資源や資金が乏しく、折角のネットワークを生かし切っていません。私は、人的ネットワークを既得権とするのではなく、公の資源だと考えます。もしお望みであれば、共に社会基盤を深化していきたいと存じます。御忌憚のないご意見をお聞かせください。私にとってこれは使命の問題だと考えています。


我が国、最大の不良債権、即ち、「不発弾」は、国債です。その国債が破裂するかしないかは、出口戦略次第たと考えます。ただ、いずれにしてもいつまでも放置しておくことはできません。

我々は、どの様な事態に陥ったとしても次の世代にこの国を手渡していかなければなりません。
日本が抱える闇の部分がこの国を呑み込み、混沌とした社会になったとしてもこの先に何らかの光明を見出し、必ず必ず、新しい時代を築き上げる事が出来るように、可能な限り希望を残していかなければなりません。
その為に、必要なのは、地域のコミュニティーの再構築だと私は考えます。要するに、生活の基盤が確保されれば、人々の生活を維持する事は可能なのです。
災害を見てもわかるように、ガス、水道、電力、道路、通信と言うライフラインが寸断されたら、その瞬間から人々の生活は破綻します。

そのライフラインの根底にあるのは、生活空間であり、地域コミュニティです。その地域コミュニティが根底から崩壊しようとしている。それが現在です。
経済が荒れ狂い、日本経済の土台が覆された後に残るのは、高齢化社会です。
その時、年金制度、介護制度は、破綻し。医療負担は増し。税負担が高くなり。仕事場が失われ。商店街は、荒廃し。家族の絆が失われていたら人々の生活は成り立たなくなります。
ところが、年金制度や介護制度は破たん状態であり、医療費の負担も増加しています。商店街は、シャッター街に代わり、生活感が失われつつあります。家庭崩壊は今に始まった事ではありません。
だからこそ、人的、また、情報ネットワークが死命を制するのだと考えます。バーチャルなネットワークとリオルなネットワークの融合です。

経済とは何か。私は、経済とは、生きるための活動だと定義します。そして、その手段として貨幣制度や市場制度がある。
お金は、負の存在です。貨幣制度は虚構です。実体はない。貨幣に実体を持たせるのは、人と物です。ところがいつの間にか、「お金」が主役となり、資産価値や為替が変動するたびに人々は振り回されてるようになってしまった。

経済は、闇の部分を生じさせやすい。闇の部分とは、表に表せない負の歪です。そして、その負の部分を担っているのが「お金」です。経済の闇は、経済体制を蝕み、人心を荒廃させ、最悪の場合、社会体制を崩壊させてしまう。しかも、闇を生じさせる要因は本業に関わりのないところで生じるのです。

経済のの闇を生み出す直接的な原因が為替の変動や資産価値の乱高下、原油価格の高騰、あるいは、地震や洪水、事故や戦争と言った当事者にとって不可抗力な事が原因となる事が多いからです。自分たちの経営努力とは別の次元で闇は生じ、それが自分たちが営々として築き上げてきたものを芯から腐られてしまう。
その為に、闇から生じる原因を作った者に罪悪感がない、と言うよりも罪悪感が持てない。下手をすると自分まで被害者であるような錯覚に陥る。その為に、抜本的な対策が立てられずに、まるで不発弾、時限爆弾のように市場の奥底に潜んでいているのです。この様な闇の部分が社会の根本を侵食し、人々の価値観をも堕落させてしまう。
しかし、だからと言って責任から逃れられるわけではありません。
自動車事故を不可抗力で犯したとしてもその罪から逃れられないようにです。少なくとも、我々は、闇を直視し、その本性を見抜く必要があるからです。

何が経済にこの様な闇を生じさせてしまうのか。それは、第一に、市場経済には、実質価値と名目価値があり、それが乖離してしまう事。第二に、貨幣制度は、債権と債務を生じさせる。その債権の価値は変動しているのに、債務の価値は、一定だという点。第三に、収益と費用、資産、負債の関係の歪みから生じる構造的問題。第四に、財政、家計、企業、海外部門間の資金の過不足から生じる歪み。第四に、公に闇の部分を解消する手段が確立されていない。第五に、闇を生み出す原因は、一過性の変化だけでなく、恒久的、構造的、本質的変化だという点、これらの点にあると私は考えます。
特に、市場の変化です。市場は、成長期から成熟期へと変化しています。それは量から質への転換です。競争ばかり煽っては、結局逆効果になりかねません。競争の背後にある実体を見極める必要があります。

盗むな、殺すな、欺くなと言う道徳は、自分の意志で防ぎことはできます。しかし、意図せずして犯す罪は、自分の意志だけでは、防ぎようがなく。人々の精神を根本から腐敗させてしまいます。なぜならば、それを犯しいている者に不正だという自覚がないからである。それが経済の落とし穴です。
欲得だけで罪を犯すわけではない。だからこそ、人間の心底にまで染み込み人格まで破綻させてしまうのである。
我々は、この現実から目を背けてはならない。目を背ければ、人は、闇に呑み込まれてしまうからである。
大切なのは、日本人としての自覚であり、志だと思います。


リアルネットワークと言っても誤解している人がいます。リアルネットワークで重要となるのは、何によって人と人、あるいは、人と経営主体が結び付けられているかです。
リアルネットは、単に顧客と業者との関係だけで成り立っているわけではなく、継続的な業務的裏付け、金銭的取引があってはじめて成立します。この点がリアルのネットワークの特性です。
プロパンガス事業におけるリアルネットワーク、人的ネットワークには、配送、検針、保安、コール等のネットワークがあり、基本的に業務によるネットワークです。配送、検針は、メーター、保安は、設備の販売履歴、容器や設置状況のデータベースを基礎に持っています。無論コールセンターは、顧客名簿が基礎となります。
直接、人と人が接する事で成り立っているネットワークだという点です。
今日、配送や保安の合理化は喫緊の課題であり、宿日直問題や雇用問題とも絡み宿阿ともいえる課題でもあります。
この人的ネットワークの重要性は、ビックデータやバーチャルなネットワークの基礎となる点にあります。配送ネットワークは、ビックデータを収集する際の端末の計測器を備えているという点である。しかも、現在のメーターはマイコンメーター化されつつある。
また、保安台帳は、個々のーザーの設備データ、容器の設置状況、販売履歴、保安履歴を持ち、しかも法的な強制権を持っている。顧客データは、顧客の基礎データを持っている。個人情報の塊でもありますが、同時に業務に直結した情報でもあり、在宅医療や在宅介護といった業務のプラットホームに活用する事もできます。
金融とか、インターネットは、バーチャルのネットワークであり、活用する時、人や物が介在しません。その点、プロパンガス業界の持つネットワークは、全ての局面において人と物が介在します。
ただ、プロパンガス業界がそれを活用するためには難点があります。
一つは、業界内部で標準化が難しい。配送や保安と言うのは個々の企業の基幹業務であり、顧客データに直結していて共有化が難しい。第二点は、個人情報と強く結びついているという点です。故に、扱いが難しい。しかも、底辺に二万軒近い小売り業者がいる。
これらの要件があるために同業者間で協業するのが難しい。それぞれの利害がある上に、企業の生命線でもあるからです。だからこそ、情報通信企業の介入する余地があるのです。
また、個々の業務に対するノウハウは、弊社が担う事はできます。現実にパーパスのプロパンガスのシステムの開発は弊社と共同開発と言うより弊社のノウハウを土台にして作られたものです。
本来ならは、これらのネットワークは、産業のインフラストラクチャーを形成する部分なので元売りが関わるべきであり、ノウハウもある程度蓄積していますが、ただ、元売りにも元売りの立場があり、特定の勢力の側に立った形で進められない。かといって中立的な立場にも立ちにくいという事で、積極的に取り組めないという事情があります。
重要なのは、プロパンガスの人的ネットワークと言うのは、プロパンガスだけでなく、地域ネットワークの基盤となりうるという点であり、地域コミュニティーのプラットホームとなりうるという点です。
だからこそ、私的なネットワークから公的なネットワークに変えていく必要があるのです。
バーチャルなネットワーク、即ち、金融、情報は、リアルなネットワークと融合する事で初めて効力を発揮する事が出来るのである。
日本は、重大な曲がり角に立っています。今のままでは、日本は沈んでしまいます。何が一番の問題かと言うと、やはり、人間の問題だと思います。国家とか、社会に対する明確なビジョンや哲学がない。
将来に対する展望や構想もないままに行き当たりばったりの施策に終始している事です。
先ず、我々は、どの様な国にしたいのか。どの様な社会を望んでいるのかなのである。
その為にも地域コミュニティーが果たす役割が鍵を握る事になると考えます。




       

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