80、総収入の変化が経済全般に影響する



総収入の変化が経済全般に及ぼす影響を知る事である。総収入の変化には、総収入が拡大から停滞に変化した場合、拡大から縮小に変化した場合、逆に停滞から拡大に転化した場合、縮小から拡大へと転化した場合等である。
市場の拡大が止まり、停滞、あるいは縮小に向かった場合をどの様な経済状態に陥るかである。
例えば、貸しビル業を例に考えた場合、開店当初部屋がすべて埋まったとしても家賃の上昇が止まっている場合、それ以上の収益を望むことはできない。逆に市場が縮小していて家賃が下落した場合、収入は、開店時点を境に減少することになる。それに対して借入金の返済は、固定的に発生する。費用は、減価償却費をはじめ固定費が一定額継続的にかかる事となる。また、利益に対する納税支出もかかる。
収入の上限が固定されているのに、固定費の拡大は止まらない。そのために、実質的な投資を抑制して名目的費用によって収入の減少を補おうとする。さらに費用や支出を抑制する事を優先するために、市場全体の効用は低下し、費用や支出が減少されることによって実質的所得が抑制され、可処分所得が圧縮される。
現金収支と損益は、別の原理が働いている事を見落としてはならない。
現金主義の時代の感覚と期間損益主義とでは、投資と現金収支において決定的な差がある事を忘れてはならない。
つまり、現金主義に基づく場合、例えば、かかった費用の内、自前の費用、自分の土地を使ったとか、建物は古くからあるものを改造したという場合は、投資として資金の流出がなくても期間損益の場合は、資本として計上しなければならなくなる。また、支出がなくても減価償却費として一定期間にわたって費用計上することが要求される。
投資をしなければ新たな費用は派生しないし、見かけ上の費用を削減することもできる。その事によって見かけ上の利益が上がり、価格の押し下げ要因として働く。
この様な前提に基づくと現実の現金収支ではなくて期間損益、即ち、費用対効果によって経済効果が計られることになるのである。つまり、期間損益主義では、現金の支出がなくても費用は計上される場合があり、逆の場合もあるのである。
それは、現実の現金の流れより資産や負債、資本と収益、費用の関係によって経済が動かされている事を意味する。この点が重要なのである。
営業キャッシュフロー、投資キャッシュフロー、財務キャッシュフロー、そして、費用と収益の関係は、この点を考慮しないと理解できない。
経済全般で見ても現在の日本の様に名目的な収益の拡大が止まると、資産や負債から生じる費用や支出の圧迫が高くなる。そして、それが実質的可処分所得を減少させるのである。この様な効果が市場の収縮に加速度をつけてくる。
現代の日本経済が底なし沼の様に陥っているのは、収入の停滞によって資産や負債、費用の負の働き強まっている事に起因している。この点を改善しない限り、日本経済は、内圧によって押しつぶされてしまう。
見かけ上の利益は、増加していても実際的な現金収支は、常に、負である状態に陥る。企業はさらなる利益を求めて過当競争に陥り、現金収支を悪化させる。そして、資金繰りが悪化して突然死を迎えるのである。これは、市場全体の未来を暗示している。

気を付けなければならないのはも収益ではなく、収入だと言う点である。

総収入は、総所得を意味する。税法上は、所得と収入は別である。しかし、ここでは同じものとする。
総所得は、分配のための原資である。

付加価値が分配の基にある。だから、総所得なのである。
付加価値を構成しているのは、償却費、人件費、地代家賃、金利、配当、税である。それぞれの背後にある要因がどのような働きをしているかを解明する事が経済を理解するために不可欠な事である。
償却費、人件費、地代家賃、金利、配当、税の背後には、分配対象が隠されている。すなわち、設備に対する分配か、家計に対する分配か、資本に対する分配か、一般政府に対する分配か、何に対する分配なのかが問題なのである。
そして、この分配の考え方間違いが政治体制の違いにもなる。何を重視するかによって国家体制も変わる。それほど需要な問題である。税は所得の再配分を意味している。税を重んじる事は、高福祉国家、社会主義を志向している。人件費を重視すれば自由経済を志向する事である。利益を重視すれば、市場経済重視、コーポラティズムにつながる。償却、配当を重んじる事は資本主義志向であり、金利を重視するという事は、金融資本主義を志向している。それは主義の問題であって原理の問題ではない。
人件費という費用に対する配分を減らすのならば、配当や金利、税に対する配分を増やさなければ均衡は保てない。そして、それは主義の問題でもある。全体が圧縮されたら分配の原資まで圧縮され経済が成り立たなくなる。
今、問題なのは、付加価値全体を圧縮している事である。つまり、配分以前の問題なのである。








       

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