最近のマスメディアを騒がせている企業買収や産業再編の話には、天文学的な数字が飛び交っている。また、世の中は、景気が良いといい豪華なホテルやレストランが次々と開店している。しかし、多くの人々には、景気の回復すら実感できない。ますます、生活が厳しくなっているのが実情である。その証拠に、ホームレスやネット難民なる者が徘徊している。一体どこからこの違いが生まれているのであろうか。

 電子マネーは、私製貨幣(代用貨幣)の一種であると見なされる。

 貨幣は、実物貨幣、兌換紙幣、不兌換紙幣、電子マネーへと進化してきた。通貨の情報化は、必然的に貨幣の無形化、象徴化をもたらす。また、インターネットの発達は、仮想空間を生み出し、その仮想空間の拡大を促す。それは、仮想マネーを流通させる空間と手段を準備することになる。こうなると仮想マネーが生まれるのは、時間の問題である。
 究極的に言えば、通貨の情報化とは、数値信号化である。そこから電子マネーが派生する。電子マネーは、コンピューターやインターネットの中に存在する情報に過ぎない。
 貨幣の情報化の意味は、貨幣が物的実体を喪失しつつあるという点にある。それは、これまで中央銀行が独占してきた発券機能を中央銀行だけが独占し続けることが困難になってきたことを意味する。現に、金券、商品券、プリペイカードのような形で発券機能の一部が民間に転移する現象が生起している。プリペイドカード、電子マネーは、この傾向をますます高めることになる。そうなると、通貨の流量の管理が非常に難しくなる。
 又、この様な私製貨幣は、信認の上でも問題がある。例えば、金券のような物は、発行している企業が倒産すると無効になる場合が多い。

 不兌換紙幣は、兌換紙幣として実体的価値の裏付けがない貨幣だと言っても物理的実体がなくなったわけではない。むろん、その為に、偽札問題は、常に存在する。しかし、それでも、通貨の管理として物理的な形で信認を確保することは、可能である。しかし、電子マネーは、物理的な形での信認はとれない。故に、電子マネーの価値をどの様に、又、誰が保障するのかが重大な問題となる。そして、その有り様によっては、通貨制度そのものの根幹を揺るがす事態に発展することも充分に考え得るのである。

 金融機関というのは、元々は、両替商であった。また、中央銀行の前身は、金細工師だったというのは、中央銀行の機能を象徴している。つまり、兌換紙幣の前身は、金の預かり票だったのである。両替商というのが象徴しているは、為替の決済機能である。
 この預かり票、即ち、発券機能と決済機能というのが中央銀行には欠かせない機能であり、独占的な機能でもある。しかし、これらの機能が中央銀行以外のそれも金融機関以外でも可能となると中央銀行本来の機能が果たせなくなる危険性がある。その最大の物が通貨の流量の管理である。これは、電子マネーが更に進化して仮想マネーまで行くと尚更である。それは通貨の在り方そのものにも影響を及ぼす。

 仮想マネーというのは、どこまで行っても実物価値による信認ではなく。そのマネーを管理している仕組みや手続きの正統性、信頼性に基づくのである。また、電子マネーは、今まで、マネーの持ち主を特定できなかったのが、マネーをデータ化することによってマネーの特定が可能になることも意味する。つまり、マネーに情報を付加することも可能になるのである。電子マネーにおいて認証性の問題がある事を意味する。

 情報技術の革新は、新しい可能性を人類にもたらした。しかし、同時にいろいろな問題ももたらしたのである。

 又、インターネットや携帯電話と言った情報産業の発達が、コミニュケーションをよくするどころか、ひきこもりやニートのような存在を生み出している。
 同じ様なことは、仮想マネーにも言える。仮想マネーの出現は、貨幣そのものの在り方をも変えてしまうことになりかねないのである。

参  考
 仮想マネーの偽造でガンホー元社員を逮捕[金子 寛人=日経パソコン2006/07/20]
 ゲーム通貨6910億ゼニー(1400万円)を不正に生成/売却
 警視庁丸の内警察署は2006年7月20日、大手オンラインゲーム運営会社のガンホー・オンライン・エンターテイメントの元社員(26歳、同年7月19日付で懲戒解雇)を不正アクセス禁止法違反の疑いで逮捕したと発表した。ガンホーが運営しているオンラインゲームにおいて、ゲーム内で流通している仮想通貨を不正に増やし、他のユーザーへ仮想通貨を譲渡する見返りに現金を受け取っていた疑い。元社員は容疑を認めているという(発表資料)。
 元社員が不正アクセスしたのは、ガンホーが運営しているオンラインゲーム「ラグナロクオンライン」。同ソフトでは「Zeny(ゼニー)」という仮想通貨が流通している。通常はゲーム内に出てくる敵を倒し、そこで得たアイテムを売却することでゼニーを得られる。  ガンホーの社内調査によると、元社員は、直属上司の画面を盗み見ることで、本来は検証用やメンテナンス時に用いる管理者用ツールのIDとパスワードを取得。管理者用ツールを不正に使い、6910億ゼニーを不正に生成した。これを他のユーザーへ譲渡する見返りに、現金1400万円を得ていた。「通常、敵を倒して得られるゼニーは非常に少なく、最小で1ゼニーからとなっている」(ガンホー広報)といい、ゲーム内で流通している仮想通貨が短時間で急激に増加したことから発覚した。2006年3月24日に同社で異常を把握してから社内調査を進めた結果、元社員が犯行を認めたため、同年6月1日に警察へ被害届を提出、逮捕につながった。
 一般にオンラインゲームでは、運営会社は公認していないものの、仮想通貨を現金に換金する業者が一般ユーザーと同様に入り込んでおり、ガンホーもラグナロクオンラインにおいて、こうした換金業者の存在を確認している。「Webサイトなどの情報によると、通常の換算レートは100万ゼニー当たり100〜150円という水準。元社員が自己申告した1400万円というのは、やや少ないのではないかという印象もある。警察の取り調べによって、さらなる不正が出てくる可能性もある」(ガンホー広報)としている。
 アクセス権限の制限強化などの対策を発表
 ガンホーでは今回の事件を受け、アクセス権限の制限強化を柱とする再発防止策を発表した。ガンホー社員は2005年12月31日現在で118人。事件発覚当初、管理者用ツールへのアクセス権限を持つ社員は、元社員の直属上司を含め31人いたという。事件発覚後、管理者用ツールへのアクセス権限を持つ社員を絞り込み、現在は19人とした。「現在運営しているゲームは7タイトルあり、2006年内にさらに3タイトル増える見通し。ゲームの運営管理体制に支障のない範囲で、アクセス権限を持つ社員をさらに絞り込んで、最小限にしていく」(ガンホー広報)。
 また、従来の管理者権限は一律にフルコントロールで、個々の社員が業務上必要とする以上の機能も使用可能な状態になっていた。今後はアクセス権限を細分化し、本来の業務範囲を超えたアクセスを禁止するという。このほか、管理者用ツールを使用可能なパソコンを減らし、管理者用ツールの入ったパソコンそのものの認証を強化する予定としている。  同社では今回の事件を受け、社長と担当取締役、元社員の直属上司3人、システム管理者1人を減俸とする処分を実施した。

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