情報革命と言われ、情報化が叫ばれるようになって久しい。情報化というと、コンピューターやインターネットに代表されるIT産業や通信産業の専売特許のように思われがちであるが、情報化というのは、記号化であり、数値化を意味し、その意味ではあらゆる産業にわたって情報化が進んでいるといえる。中でも貨幣や証券の情報化は、特別の意味を持っている。貨幣や証券の情報化は、結果的に、金融のシステム化をもたらす。そして、金融の情報化によって金融そのものに革命的な変化がもたらされているのである。

 情報化がもたらす変化は何か。第一に、情報化とは、記号化である。第二に、信号化である。第三に、数値化である。第四に、無形化である。第五に、象徴化である。第六に、抽象化である。第七に、普遍化である。
 この様な情報の特性は、第一に、体系化ができる事である。第二に、保存・記録・蓄積ができることである。第三に、分類ができる。第四に、論理化ができる。第五に、瞬間的に移動ができる。第六に、情報それ自体が価値を持つことができ、資産化することができる事である。これらの特性が、情報化の前提となる。

 情報革命、インターネット革命と同時に、金融革命が進行中である。金融革命とは何か、それは第一に、貨幣の情報化である。第二に、貨幣を流通させている金融システムの革新である。第三に、金融システムが革新される事による金融業界の構造的変化である。第四に、金融システムが革新されることによる金融商品の高度化、多様化であり、それに伴う金融技術の革新である。第五に、貨幣の無国籍化、グローバル化である。
 金融革命は、貨幣の無形化、数値化情報化が重要な要素である。また、金融工学が確立されたことである。

 経済の仕組みや制度は、その当初の目的や意図とかけ離れたところに本来の機能が付与されることがある。その場合、その仕組みや制度は、当該の仕組みや制度の持つ属性の中に、当初の目的を取り込んでいる場合がある。それが仕組みや制度に支障を及ぼすことが発生するとその属性を削ぎ落として、特定の機能に特化、純化していく。経済制度や仕組みはその過程にあると思われる。それを進化と言うかどうか、また、直線的に特化、純化するかは別にしても経済の仕組みや制度は一定の機能に収斂していく傾向がある。

 貨幣制度は、その典型である。貨幣は、当初、儀式、祭典、儀礼に用いられてきたものであり、権力や富の象徴として用いられた。それが、贈答を通じて交換の媒体となり、やがて交換価値を象徴する物へと進化してきたのである。そして、その時点での貨幣は、交換価値を表象した物であるが、純粋に交換価値だけを表象したのではなく、その貨幣の持つ実物的価値、即ち、金貨ならば金の価値を背景として持っていた。しかし、それが兌換紙幣によって貨幣その物が持つ価値から乖離した。そして、今日、貨幣は、紙幣やコインと言った実物としての属性もはぎ取られようとしている。
 今日、貨幣は情報化へと発展しようとしている。これは、ある意味で貨幣本来の機能を象徴している。つまり、貨幣は、交換価値を情報化し、表象した物だと言うことである。そしてその行き着くところが情報化である。情報化とは、紙幣やコインと貨幣の実物的な属性を削ぎ落とす事である。
 この様な情報化した貨幣の裏付け、信用は何が保証するのであろうか。それは、貨幣を必要としている仕組みや制度、システムによって為されることになる。それは、貨幣がそれまでの頸木(くびき)から解き放されることを意味する。

 この様な、仕組みや制度、システムによる貨幣価値に対する与信行為は、それまでの通貨の概念を根本的に覆す可能性がある。その兆候が仮装マネーの発生である。

 仮装マネーとは、インターネット上の仮想社会における、仮想的通貨である。この様な仮装マネーが、現実の社会の決済に使用されつつある。また、その有効性が認められつつある。それは仮想社会が現実を浸食することを意味する。

 そして、仮装マネーの流通は、既存の金融システムの枠外で決済が行われることを意味する。仮装マネーの流通は、貨幣の発券行為である。それは、発券銀行、中央銀行を核とした金融スシテムを根底から揺るがすことにもなりかねないのである。

 貨幣の情報化は、物理的な送金の必要性をなくす。つまり、インターネットというネットワークを流れる情報でしかなくなる。この様な貨幣の情報化は、取引の在り方をふくめ、経済、市場の根本的な環境や在り方を変革してしまう。つまり、目に見える取引を主体とした市場、経済から、目に見えない取引を主体とした市場、経済に変質してしまうのである。
 この事は、通貨の流れを当局が把握することが困難になり、取り締まることも難しくなることを意味する。また、金融システムの制度的、法的垣根を取り外し、地球的規模での一体化を推進することになる。世界的な制度や規制が確立されないと、マネーロンダリングや租税回避行為、犯罪組織の資金移動の温床となる危険性がある。

 貨幣の情報化は、金融制度に質的な変化を引き起こしている。それは、金融制度が仮想空間の中のシステムとして再構築されつつあるという点である。同時に、それが三次元的な市場に時間軸を加えた四次元的な市場へと変化させつつあるという事である。具体的に言えば、先物市場やデリバティブの発達である。つまり、先物市場やデリバティブは、それまでの現物的な市場に時間差による変化を加味することによって成立しているのである。それによって市場全体が四次元的空間に質的な変化をしたのである。しかも、市場がインターネットによって結ばれることによって時間的、空間的な距離がなくなり一体化したことである。

 貨幣の特徴をデリバティブほど表しているものはない。デリバティブは、貨幣の性格をよく表している。先ず貨幣は、その時点での市場で貨幣に表示された価値と同等の財と交換する権利を表象したものだと言うことである。つまり、貨幣とは権利の表象なのである。それ自体が価値を有する実体があるわけではない。市場における財の価値は一定ではない。つまり、貨幣が表象する交換価値も一定ではなく。その時点時点の市場の価値に左右されるのである。
 究極的には情報なのである。情報化することによって市場取引が数値化、デジタル化され、信号化された空間に、さらには、数学的、抽象的空間へと変貌したのである。反面において、実物的な市場から乖離し、純粋に確立統計的市場にも変化してしまった。
 それは、貨幣市場、即ち、金融市場や為替市場、実物的市場から遊離し、それ自体が、独自の市場を形成するに至ったのである。貨幣は、本来、実物経済の影である。またあらねばならない。影とは、虚像である。ところが、影、虚像であるべき金融市場、貨幣市場が実物経済を左右する。左右するどころか支配すらするようになってきたのである。

 情報には、実体がない。あるのは記号である。つまり、貨幣の情報化は、価値の記号化、数値化を意味するのである。記号も数値も人為的に作られた物である。という事は、人為的に作り出すことが可能だと言う事である。しかも、情報には、限りがない。
 貨幣価値の情報化は、貨幣価値が実体から乖離することを意味する。実体のない、情報としての貨幣が市場を駆け巡り、実物経済を揺るがしている。故に、情報化した貨幣を制御する事のできる市場の仕組み、システムを構築する必要があるのである。

 ネットワークが国家の枠組みを超えて結びつき、世界的に一体となろうとしていることを前提として、貨幣の情報化の持つ働きを理解する必要があるのである。
 

貨幣の情報化と金融工学

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