1971年、ニクソンショックによって世界は、変動為替相場制に移行した。
 オイルショックは、経済を劇的に変化させた。第一次オイルショックの際は、直後に消費者物価指数で28%も上昇し、狂乱物価を引き起こした。
 1989年にベルリンの壁が崩壊し、東西ドイツは、統一へと向かった。それにより、共産主義体制は、崩壊に向かい、ほとんどの国が民主化、自由経済へのと向かった。
 2001年に起こった9.11、アメリカ同時多発テロはその後の世界情勢を劇的に変化させ、アフガニスタンのタリバン政権の崩壊、イラク戦争とフセイン政権の崩壊を導き出した。そして、それは、日米の経済関係にも微妙な影を落とし、石油価格にも影響を及ぼしている。

 この様に、世界の出来事は、日本経済に甚大な影響を与えてきた。

 産業の損益は、外部環境に依拠している。故に、外部環境を見極めた上で政策を決める必要がある。

 近代経済学は、歴史的事実や地理的条件、国際情勢が経済に与える影響を故意に低く見ているのではないかと思われる。
 経済学が問題にするのは、金利であったり、公共投資のような経済施策、また、物価や税制のようなもので、現実の世界の動きは、まるで経済には、無縁であるかのようにすら見える。

 経済は、現実である。会計制度の動向や石油情勢、宗教的問題、国境紛争、食料の作柄、また、選挙結果と言った世俗的な出来事こそより多くの影響を経済に与える。
 例えば、オリンピックやサッカーのワールドカップをどこで開催するのかは、たんなるゴシップではなく、優れて経済的問題である。また、誰が、次の政権の担い手になるのかも経済的問題の一つである。

 戦争や、天災は、経済に直接的に影響をする。革命が起こって政権が変われば、経済は一変する。テロにより、テロ支援国が経済制裁を受ければ、当たり前に経済に反映する。石油プラントや素材プラントに事故が起これば、とたんに相場に反映する。

 新薬の発見や粉飾決算は、株式市況を狂わせる。それらが経済に影響を与えないはずがない。
 世界の資本市場、株式市場は繋がれており、一国の株の暴落は、瞬く間の内に世界の資本市場に影響を与える。1929年10月24日に起こった株の大暴落、俗に言う「暗黒の木曜日」は、世界の資本市場に波及し、その後の世界恐慌の直接的原因となった。そして、それは、世界大戦への道と繋がっていったのである。

 ヘッジファンドの動向は、為替に影響を与える。それが、世界経済を混乱させる原因になることもある。

 会計制度の変更は、産業の勢力分布に影響を与える。多国籍業の経営方針は、世界経済を揺るがせることもある。

 国際会計制度は、世界を一つの会計理念で統一しようとする思想である。そして、共通の会計制度によって国際経済を律していこうという考え方である。しかし、この考え方は、銀行の自己資本問題が好例であるように、各国の経済政策を拘束する力を持つようになる。つまり、新たな覇権主義の基ともなりかねないのである。

 世界規格は、新しい産業の勢力分布を決めかねない。例えて言えば、携帯電話やパソコンのOSデファクトスタンダードは、世界の産業の在り方をも変えかねない。この様に、世界経済の基礎を為す部分は、これからの産業の在り方まで規制するのである。

 オフショアやタックスヘブンにおける税の在り方は、資金の動きに影響を与えずにはおかない。

 昔、税の在り方が、町屋の家の間取りに影響を与えたという。つまり、経済は生活そのものなのであり、世界中が交易の舞台となっている今日、地球の裏側の出来事も瞬時にして我々の生活、経済に影響を与えずにはおかないのである。

 外的な場には、国際政治の場がある。エネルギーのような原材料市場の場がある。為替の場がある。そして、労働市場がある。会計制度の場がある。金利動向のような国際金融の場がある。国際法的な場、そして、各国の国内法が作り出す場。自然環境の場がある。この様に、外的な場は、いくつもの場が重なり合いながら重層的に作られて場である。

 日本は外圧に弱い国という評価を受けている。事ある毎に、外国から圧力をかけられ、そのたびに重要な政策の変更を迫られてきた。

 もっとも、我が国は、黒船による圧力に屈服する形で開国をし、そして近代への道を歩み始めたのである。我が国の近代は、最初から外圧によって始まったと言っても良いのである。しかし、その時に結んだ不平等条約が以後の日本を苦しめ続けた。
 日本が、真の独立を手にするためには、外圧の頼ることなく。独自の理念、独自の思想によって自分達の進路を決めていく必要がある。

 経済政策の多くは、内政、即ち、国家の独立に関わる問題である。日本が独立国としての地位を保ちたいならば、我々は、常に外部から経済に及ぼしてくる力を認識し、自分達でその解決策を示していかなければならない。


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