国際分業などと言う美名がある。しかし、国際分業が平和裡に行われた事は、歴史的にない。なぜならば、産業は、生活の糧だからである。常に戦いの中でそれぞれの国が自分達の産業を築き上げてきたのである。
 そして、自国の産業が有利になるように時には、戦争も辞せずに戦い、その戦いに敗れた国は、経済的に衰退してきたのが歴史的事実である。
 この様な覇権主義的な思想を帝国主義というが、帝国主義は決して過去の遺物ではなく。現在も強国の中で生きている思想なのである。

 自由に貿易をさせていると国際間で産業に偏りが生じる。その偏りを是正するには、保護関税か通貨調整課によらなければならない。いずれにしても保護貿易主義だけでは、限界があり、また、弊害も発生する。そこに、変動相場制度がとられた理由がある。
 つまり、通貨の価値の変動によって各国の経済水準を調整しようという制度が変動相場制度の機能なのである。その為には、自国の通貨を基軸通貨にしようとする動きが常に働いている。基軸通貨を狙った覇権主義的な動きが常に、国際経済社会には働いており、それが微妙に為替の変動に影響を与えているのである。
 その典型が、レーガン大統領のドル高誘導政策であり、その反動がルーブル合意である。しかし、政治的な力には限界があることを最近の為替の変動やヘッジファンドの動きが示している。

 結局、通貨の価値は、最終的には、資金の流れが決定するのである。
 その際、決定的な要素となるのは、貨幣の時間的な価値である、経済の成長率、金利、物価の上昇率である。

 為替相場を決定するのは、最終的には資金の流れである。

 市場経済を構成する重要な要素は、人口と生産力、そして、通貨である。それは、経済が基本的に労働と分配によって成り立っているからである。
 その意味で、通貨は、国際市場の覇権を決定付ける鍵を握っている。基軸通貨を握ることは、経済的覇権を確立することでもある。
 経済の覇権を維持する決め手は、人口、生産量、そして、通貨の流量である。通貨の流量というのは、通貨の国際的流動性である。基軸通貨であるという事は、自国の通貨が、国際的決済手段であるという事である。

 基軸通貨国は、自国の通貨を国際市場に流通させることによって国際市場の決済手段を保障する。その為に、基軸通貨国は、経常赤字が運命付けられている。しかし、経常赤字が累積しても自国の通貨が、国際市場で支払決済としての機能を持っていれば問題ない。問題になるとしたら、基軸通貨としての信認を失った時である。(「サブプライム後に何が起きているのか」春山昇華著 宝島新書)

 輸出国と輸入国との関係は、生産国と消費国との関係でもある。生産拠点と消費拠点の間でダイナミックな貨幣の環流が起こると市場経済が起動する。しかし、経済は、基本的には物量であり、物量が途絶えれば、貨幣がいくらあっても経済は機能しなくなる。

 為替というのは、離れた場所、隔地間の債権・債務の決済、又は、資金の移動を現金の直接移動をせずに金融機関の決済機能を利用して行うことである。(「国際金融のしくみ」秦 忠夫・本田敬吉著 有斐閣アルマ)為替には、内国為替と外国為替がある。

 為替は、取引によって生じる。なぜならば、債権・債務という関係は、取引から生じるからである。つまり、取引がなければ、債権・債務は生じない。債権、債務の関係が生じなければ、債権、債務の解消も生じないから、即ち、決済という行為そのものが派生しないのである。ならば取引とは何か。
 取引というのは、債権債務関係が生じてからそれが完結するまでの行為を指す。決済というのは、債権債務関係の解消を指して言う。

 内国為替というのは、国内で生じた取引を決済するための手段であり、外国為替というのは、二国間での取引を決済するための手段である。

 外国為替では異種通貨の決済の問題が派生してくる。

 為替の変動は、成長率、インフレ率、金利、失業率、貿易・経常収支、そして、最終的には、為替レートと言った複数の変動する基準によって調整されている。つまり、為替の変動は、為替の動機だけによって定まるのではなく、複数の要因の圧力が均衡するところで安定するのである。

 財政赤字もインフレもデフレも貨幣的問題であり、実物的問題ではない。為替もまた然りであり、為替の変動は、極めて貨幣的な問題である。

 石油を例にとれば、オイルショック時に以上に高騰した石油価格であるが、石油価格の絶対額、額面価格の動向だけを見ても石油の価格が最終的にどう裁定されたかを理解することはできないという事である。石油価格の高騰の正比例して物価が上昇すれば、石油価格が消費価格の中に占める比率は変わらないことになる。また、為替が上昇すればその分原油価格の上昇は、吸収されてしまう。要するに価格は、相対的な物であり、物価や金利、為替の動向と言った複数の基準と照らして判断すべき要素なのである。
 石油価格は、原油価格、為替、国内需要(市況)、石油製品の価格構造、製造原価、金利や輸送にかかる費用、これら一つ一つの要素がどう関連し、また、どう作用するかによって決定付けられる。しかし、最終的には、国内の経済構造の中で吸収されるのである。石油がいくら高騰したとしてもそれが、市場の需給原則を踏み外すほどの影響を与えることはできない。石油価格が本格的に高騰するのは、政治的な要因でなく、即物的、現実的要因が市場や経済に跳ね返った時である。それは、石油が枯渇するか、石油に変わるエネルギー資源が発見されるかした時である。

 為替制度には、第一に、固定相場制。第二に、変動相場制。第三に、固定相場制と変動相場制の中間的な制度の三つの制度に大別される。
 
 為替制度の変遷を見ると17世紀から18世紀まで金銀本位制が続き、1870年代後半から1914年まで国際金本位制、そして、1920年代半ばから1930年にかけて国際金為替本位制、1945年12月にブレトンウッズ体制が確立しそれが1971年8月のニクソンショックまで続いた後、1971年12月のスミソニアン体制へ移行し、1976年の春まで続き、その後、変動相場制へと移行する。(「国際金融のしくみ」秦 忠夫・本田敬吉著 有斐閣アルマ)
 貨幣には、財としての実体がないため、貨幣に実体的裏付けを与える必要性から、固定相場制は、何等かの本位制度をとる。
 国際金本位制というのは、主要国が金本位制を採用した事で自然発生的に成立した制度である。
 国際金本位制度が成立する要件は、第一に、中央銀行券の金、又は、金貨への無制限兌換が保証されていること(国内的要件)。第二に、国際間の自由な金の輸出入が認められていること(大概的要件)の二点である。この様な制度では、国際収支不均衡の自動調整機能が働くとされた。
 国際金為替制度は、戦争により金の輸送が困難になったことによって成立した。

 しかし、金本位制のように何等かの実物的材を貨幣の裏付けにした場合、その財固有の相場、金本位ならば金の相場による二重価格がおきやすい。それによって通貨の価値の信認が失われる危険性がある。その為に、イギリスでは、一時的に金地金本位制をとったりした。金地金本位制とは、イギリス国内では、金の買い上げは行うが通貨の金交換は認めない。海外で保有されるポンドについては金地金で兌換すると言う制度である。いずれにしても金本位制度には限界があり、それが、第二次世界大戦前の経済的混乱(恐慌やハイパーインフレ)の原因ともなった。それは、大戦の一因ともなったのである。
 戦後ブレトンウッズ体制が成立し、アメリカドルが基軸通貨の地位が確立された。しかし、基軸通貨としてのアメリカドルは、以前として金に拘束され、結局、「金の二重価格制」が採用されなければならない破目(はめ)に陥った。最終的には、金本位制、即ち、固定相場制は放棄され、変動相場に移行せざるを得なくなる。そして、世界は、為替の動向に振り回されることになるのである。

 開国以前の日本は、金銀本位制度をとり、その金銀の交換比率が他国と違ったため、その違いを巧みに利用されて開国時に大量の金の海外流失があったと言われている。

 また、現在IMFに加盟している国の為替制度は、第一に、ユーロ圏のような国独自の通貨を持たない為替制度。第二に、カレンシーボード制度。第三に、固定相場制度。(ただ、ここで言う固定相場制度というのは、変動相場制度が主要国採用されているという前提の上に成り立っている固定相場制度であり、世界標準を固定相場制とした上での固定相場制度とは本質的に違う。ここで言う固定相場制とは、特定の外国通貨、特に、米ドルに連動させた固定相場制と幾つかの通貨をバスケットに入れて連動させて通貨の価値を固定させている固定相場制度である。)第四に、許容変動幅を広くした固定相場制度。第五に、クローリング・ペッグ制度。第六に、許容変動幅を広くしたクローリング・ペッグ制度。第七に、管理フローと制度。第八に、変動相場制度がある。(「国際金融のしくみ」秦 忠夫・本田敬吉著 有斐閣アルマ)

 為替で問題になるのは、タイムラグが発生することである。変動相場制度下では、タイムラグが生じた間に通貨価値の変動が派生するのである。

 複式簿記は、取引の認識上の作用反作用である。仕訳上の二重記帳は、貸し借りの関係がはじまりである。
 債務は、債権の素となり、債権が債務を発生させる。

 金融機関というのは、黒字主体と赤字主体を仲介し、融資を通じて黒字主体から赤字主体へ投資を促す機関である。金融機関を仲介とする為替の問題も基本的には、同じ作用を有する。

 バブル経済を引き起こした要素も、円高、株高、金利高といった時間的価値である。これは、即ち、為替、資本、金融の働きを意味する。これらの三つの要素を変動させる要因は、経済価値の時間的な価値である。

 市場は、財の差から成り立っている。
 金融市場における差とは、何か。なぜ、顧客によって金利に差がつくのか。それは、リスクの差である。リスクによる差とは、情報の差でもある。ここに、時間と情報という要素が交換価値に加わるのである。

 為替の変動は、経済の成熟と成長性に関連している。経済が拡大成長している国の通貨は、上がる傾向がある。また、経済が成熟期に入った国の通貨は、安定し、また下がる傾向がある。それは、通貨の需要が成長期にある国が高いからである。また、物価や金利に代表される通貨の時間的価値も成長期にある国は、高く評価されるからである。つまり、成長性が将来の通貨の価値を高く評価させるのである。

 為替の相場を決定付ける要素として重要なのは、国内の物価動向であるが、単純に物価上昇率からだけでは判断できない。物価を形成する構造、消費構造や生産構造が重要になる。国内物価と一律に言っても国内の物価の動きとほぼ比例している財ばかりではない。工業化が進むにつれて急速に低下し続けている財(例えば家庭電化製品やパーソナルコンピュター、携帯電話等)もあるし、景気の動向とは、無関係な要素(例えば、天候や国際情勢等)に左右される財もある。

 内外価格差や国内経済事情のようなものを国内市場の需給関係による調整によって吸収していく過程で為替変動は起こる。ただ、最終的には、国内の経済状況の中に組み込まれてしまうのである。
 国内の経済事情というのは、基本的に消費構造として現れる。消費構造というのは、文化的な差を指す。例えば、衣食住、食文化の差であり、ファッションの差であり、住宅文化である。また、冠婚葬祭の差である。世界の生活スタイルが近似してきたとはいえ、一概に同一な物として想定することはできないのである。そう言った生活構造、消費構造の差が、国内の物価の動向、内外の価格差を決定付けているのである。
 日本では松茸は、高価な食材だが、松茸を食べる習慣のない国では、無価値な食材である。日本のように、土地の供給に対して、人口が過剰な国では、地代は、他国に比べて支出に占める割合が高くなる。この様に国家や民族には、固有の文化があり、それが物価に重要な影響を与えている。


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