景気とは、市場の表面に現れてくる経済の動き、活動、現象である。景気には、一定の変動がある。景気には、波がある。

 景気には、情報が重要な役割を果たしている。貨幣は、情報伝達の道具である。取引は手段である。経済は情報系でもある。故に、景気とは、情報の一種である。情報の一種であるから、景気には、実体はない。実体はないが、経済を動かす力はある。それが景気の持つ厄介なところである。

 我々は、海面をながめているだけでは、海流を見極めるのが難しい。しかし、海には、ダイナミックな海水の流れがある。その海流や潮の満ち引き、動きを引き起こしているのは、地球の自転や太陽や月に代表される天体の動き、そして、海底の地形である。景気の流れや波を作るのは、経済全体の循環運動や天候、温暖化といった地球環境、国際政治の動向、そして、経済の根底をなす地形、即ち、ストックである。そうした要素が、渦巻きを起こし、海の流れを作り、波を起こし、時には、津波となって押し寄せるのである。

 景気には、ある種の波があることが知られている。少なくとも景気は、一定ではなく、また、右肩上がりとか、右肩下がりだと一本調子のものだと言うのではなく。何等かの上下動がある事が認められる。
 上下動があるという事は、景気には、上昇局面と下降局面とがあることを意味している。景気は、上がる一方でも、下がる一方でもない。上昇局面でも必ず頂点があり、また下降にも底がある。景気は、山あり谷ありなのである。

 景気は、傾向である。傾向は、圧力となって景気を作り出している要素に働きかける。景気の傾向は、景気の方向性を決定付ける。圧力には、上げ圧力と下げ圧力がある。

 景気の波動は、実物経済の動きに貨幣の動きが連動して起こる。実物経済に貨幣が結びつけられる事によって貨幣が実物経済を軸とした周回運動をする。それが、景気の波動を起こすのである。

 この様な波は、経済が循環運動であることの証拠である。経済は回転している。故に、景気には、波動があるのである。

 景気の波動には、長期波動と長期波動、短期波動があると言われている。
 長期的な波は、コンドラチェフの波と言われる。中期的な波は、クズネッツの波やジュグラーの波と言われる。そして、短期的な波は、キチンの波と言われる。(「景気変動と経済政策がよくわかる本」山澤成康著 秀和システム)

 空気の流れを作るのは、地表の形、地形である。地球の回転運動である。台風や竜巻。大雪になったりして、人々の生活を左右するのである。
 同じように、景気の動向を決定付ける要因は、経済全体の動き、産業の構造、景気の変動を引き起こすような局所的動因である。

 財政赤字もインフレもデフレも貨幣的問題であり、実物的問題ではない。つまり、景気は、貨幣的動き、貨幣的現象として市場の表面に現れてくる。この市場の表面に現れてくる貨幣的現象は、貨幣の流れであり、その流れを作りだしているのは、市場の構造なのである。故に、景気の動向を知るためには、景気の背後にある市場の仕組み、構造を明らかにする必要があるのである。

 景気は、経済の流れによって引き起こされる。経済の流れは、資金と物の流れである。このうち、景気に直接かかわるのは、貨幣の流れである。なぜならば、景気は、市場表面に現れる交換価値を貨幣に変換する過程(取引の過程)で引き起こされる現象だからである。つまり、市場における取引が原因なのである。資金の流れは、流動性の問題である。流動性は、財の換金性によって決まる。
 むろん、貨幣の流れは、物流との関わりに依っている。貨幣経済は、実物経済が反映されたものである。故に、貨幣の流れは物流と無縁ではない。しかし、景気は、物質的現象ではなく、貨幣的現象である。だからこそ、景気を制御するためには、資金の流れ、即ち、貨幣の流れを管理する必要があるのである。

 景気は、資金の流れによって作り出される。資金の流れは、流動性の問題である。流動性は、財や負債の換金の速度、現金化の速度によって決まる。つまり、流動性というのは、言い換えれば、財の換金のしやすさの目安である。会計上は、その期間として一年を目安としている。つまり、現金化、又は、消費するのに一年以上かかる物は、長期流動性としている。また、一年以内に支払期日のくる負債を短期流動負債としている。この様に、一つの目安として一年をおいている。それは、会計の年度が一年を基準としているからである。

 景気の変動は、貨幣価値に時間的価値が加わったことが影響している。それまでは、実取引による需要と供給が景気を変動する最大の要因だったが、その場合は、実取引以上に景気は変動しない。しかし、貨幣経済になると実取引以上に景気は変動するようになり、また、時間的価値が加わることによって景気に長期的に上昇し続ける傾向が生じた。

 資本主義を成り立たせているのは、収益と資本だが、実際に経済を動かしているのは、資金である。

 調達した資金を直接消費するのではなく、何等かの生産手段に投資し、それを運用して収益を得、あるいはまた、それを担保して資金を得る。それによって資産価値を増幅する。この資金の動きが波を生み出していると考えられる。

 景気に影響を与えるのは、金利、収益、在庫、物価、設備投資、建設投資、技術革新だと言われている。

 コンドラチェフの波は、大体五十年周期と言われ技術革新をベースとしていると言われる。
 クズネッツの波は、おおよそ二十年周期で建設循環といわれ、建築物の耐用年数が二十年ぐらいなので建設投資をベースにしていると見られる。
 ジュグラーの波は、設備投資循環、設備投資が原因だと考えられ、大体十年程度と見られる。
 キチンの波は、在庫循環、在庫投資が原因と考えられ、大体、二〜三年周期と言われる。

 資金の調達は、ストックに依り、資金の運用は、フローによる。ストックが、資金の源なのである。それは、流動性の原資は、固定資産だからである。
 相場が時価総額を引き上げる。フローがストックの価値を増幅し、ストックがフローの資金調達を拡大する。相場そのものの取引はゼロサムである。

 負債は、元本と金利からなり、元本は、貨幣の額面価値であり、変動しない。つまり、固定している。性格は、現預金と同じ。

 物価が金利を決めるのではなく。金利が物価に影響を与えるのである。物価と金利の関係は、卵が先か鶏が先かの議論に似ている。いずれにしても、金利と物価とは、何等かの相関関係がある。

 金利は、物価の動きに連動しているのであって金利の操作だけで、景気を操作しようとしても自ずと限界がある。

 金利には、固定金利と変動金利がある。物価の動きに影響を受けるのは、変動金利である。固定金利は、物価の上昇時には、有利に働き、下落時には、不利に働く。いずれにしても、景気の良し、悪しだけで金利政策を決められないのである。むしろ、金利が景気を引っ張る要素がある事を留意しなければならない。金利が景気にどの様な影響を与えるのかを構造的に明らかにする必要がある。

 時間的価値が減価する資産と時間的価値が何等かの相場や物価と連動している資産。時間的価値が金利と連動している資産がある。そして、時間的価値が働かない資産がある。

 減価する資産の代表的なものは、費用性資産で、この費用性資産は、負債と連動している。そして、この費用性資産やそれと連動している負債の概念は、資本とともに、資本主義の骨格となっている。

 不動産や建築物、資本、ライフライン、交通機関、金融のような社会の根幹を形成させている社会資本を変動する要素は、社会資本が持つ実体的な価値だけではなく、貨幣的価値も重大な要因である。相場(不動産相場)や資本市場が値を作ることによって貨幣の時間的価値が影響される。それが貨幣価値を実体的価値から乖離させてしまうことがある。

 この様に、社会的資本が貨幣の動きによって大きく変動する現象によって、実需と投機の問題を引き起こされることがある。


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