産業分類では、コーリン・クラークが、『経済的進歩の諸条件』(1941)において分類した第一次産業、第二次産業、第三次産業の分類が有名である。

 コーリン・クラークの三分類、第一次産業、第二次産業、第三次産業を分類する基準について考えてみたい。
 産業を第一次産業、第二次産業、第三次産業と三つに分類したのは、コーリン・クラークである。第一次産業は、自然に直接、働きかける産業を指し、農林漁業、狩猟、鉱業などを言う。水産加工のように天然資源を元に加工して食品を製造する業種は製造業に分類され、第一次産業には含まれない。
 第二次産業は、第一次産業が採取・生産した原材料を加工して富を作り出す産業が分類される。クラークによれば製造業、建設業、電気・ガス業がこれに該当する。
 第三次産業は、第一次産業にも第二次産業にも分類されない産業が分類される。
 クラークによれば小売業やサービス業などの無形財がこれに該当する。これらの産業は商品やサービスを分配することで富を創造することに特色がある。
 コーリン・クラークは、『経済的進歩の諸条件』(1941)において、産業を第一次産業、第二次産業、第三次産業に3分類し、経済発展につれて第一次産業から第二次産業、第三次産業へと産業がシフトしていくことを示した。これは17世紀にウィリアム・ペティが『政治算術』(1690)で述べた考え方を定式化したもので、両者にちなんで「ぺティ=クラークの法則」と呼ばれる。
 クラークは、経済発展につれて第一次産業から第二次産業、第三次産業へと産業がシフトしていくことを提示したが、クラークによる分類では産業内部で生じている構造変化をとらえきれないという弱点がある。(フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)
 尚、日本標準産業分類では、クラークが一次産業に分類している鉱業を二次産業に分類するのが慣例となっている。

 第一に商品特性である。第二に、素原材料である。第三に、製造特性である。

 商品特性という観点で言えば、第一に有形か、無形かである。次に、有形の場合、有機的な物か、無機的な物かである。これは、必然的に素原材料に影響を及ぼす。
 また、保存がきくか、生鮮食品のような保存がきかない物かがある。保存がきく物は、貯蔵ができる。在庫ができると言うことである。生鮮食品のような物には、必然的に季節変動がある。また天候に左右される。

 製造に関わると言う事は、製造期間、例えば、農業であれば、期間は、季節変動に左右される。周期は、一年ないし半期、旬期と言う単位である。つまり、季節に影響を受ける。それによって商品回転率も自ずと規制される。また、機械的大量生産方式が可能であるか否か。それは、作業の標準化、平準化、合理化が基本的に可能かと言う事である。

 その他に、古典的な仕事か、近現代的な仕事かの基準もある。コーリン・クラークの三分類も、近年では、情報産業のような産業を独立させて、四分類する傾向もある。

 日本で、産業を分類する基準として代表的なものに、日本標準産業分類がある。
 日本標準産業分類は,統計調査の結果を産業別に表示する場合の統計基準として,事業所において社会的な分業として行われる財貨及びサービスの生産又は提供に係るすべての経済活動を分類するものである。つまり、日本標準産業分類の目的は、統計調査の結果を産業別に表示する際の基準を設定することである。
 日本標準産業分類における産業の定義は、事業所において社会的な分業として行われる財貨及びサービスの生産又は提供に係るすべての経済活動をいう。(総務省)これには,営利的・非営利的活動を問わず,農業,建設業,製造業,卸売業,小売業,金融業,医療,福祉,教育,宗教,公務などが含まれる。
 なお,家庭内においてその構成員が家族を対象として行う生産・サービス活動は,ここでいう産業には含めない。
 分類の基準は、第一に、 生産される財貨又は提供されるサービスの種類(用途,機能など)。第二に、財貨生産又はサービス提供の方法(設備,技術など)。第三に、原材料の種類及び性質,サービスの対象及び取り扱われるもの(商品など)の種類である。

 日本標準産業分類では、大分類、中分類、小分類、細分類の四段階構成である。その構成(第11回改訂)は,大分類19,中分類97,小分類420,細分類1,269となっている。(総務省)

大分類 中分類 小分類 細分類
A農業 20
B林業
C漁業 17
D鉱業 30
E建設業 20 49
F製造業 24 150 563
G電気・ガス・熱供給・水道業 12
H情報通信業 15 29
I運輸業 24 46
J卸売・小売業 12 44 150
K金融・保険業 19 68
L不動産業 10
M飲食店・宿泊業 12 18
N医療・福祉 15 37
O教育・学習支援業 12 33
P複合サービス事業
Qサービス業 15 68 164
R公務
S分類不能の産業
(計)19 97 420 1269


 統計のための分類と言うが、なぜ、何のために分析するのか。それが明らかでない限り、分析は、分析そのものを目的とすることになる。つまり、分析のための分析になる。分析は、分析だけで成り立っているわけではなく。分析をする目的は、別のところにある。
 会社を経営するものは、取引先の与信のために経営分析を行うであろうし、金融業者は、融資のための分析を行うであろう。投資家は、投資のためである。同じ分析手段をとる事か適切であるか否かは、明確ではない。要は、分析者の視点、立場が重要なのである。

 通常、経営や業績を分析する目的は、リスク管理、リスク回避にある。そして、リスクは、分析をする当事者、対象の立場によって変わってくる。それ故に、必然的に分類の仕方も当事者毎に違ってくる。

 経済学における産業分類は、経済の発展段階という過程の中で捉える傾向がある。その典型がホフマンの産業分類である。ワルター・ホフマンは、経済発展を、消費財を直接に生産する段階から、製造設備などの資本財を作りこれを利用して生産性を高める段階への変化としてとらえた。従って、産業を消費財産業と資本財産業とに分類し、「消費財産業の純生産額」÷「資本財産業の純生産額」(ホフマン比率)を見ることで経済発展の程度がわかると考えた。ホフマンによれば、比率は第1段階では5.0、第2段階では2.5、第3段階では1.0、第4段階ではそれ以下となる。ただしホフマンの方法は、産業連関分析が発達した今日から見れば難点が多いとされている。(フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)

 アーサー・ルイスは、開発途上国の経済を伝統的部門(主に伝統的な農業)と近代的部門(資本集約的産業)とに分ける2部門モデルを提案した。ルイスによれば、経済が一定の発展段階に達するまでは伝統的部門からの固定賃金での無制限労働供給が続くため、経済援助の効果がなかなか現れない。(フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)

 ルイスのモデルはラニスとフェイによって精緻化された。ラニス=フェイモデルでは、農業部門からの労働力流出によって経済発展の「第1局面」「第2局面」「第3局面」が訪れ、1人あたり農業所得が上昇してゆくと説明される。(フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)

 その他には、軽工業と重工業・素材産業と組み立て産業と言う分類の仕方がある。
 製造業は、古典的な分類では食品、繊維などの軽工業と、鉄鋼、機械、化学などの重化学工業とに2分され、工業化の進展に連れて重化学工業の比率が高まってゆくと説明されてきた。しかし1960年代の日本では、重化学工業化率がアメリカやイギリスの同水準に達していながら、製造業の生産性において大きな隔たりがあることが観察されていた。

 篠原三代平は、製造業を素材産業と組立て産業とに分類して分析する必要性を指摘した(1967)。篠原によれば、当時の日本では素材産業の大きさに比べて、素材を加工し組み立てる産業が未熟であり、それが工業の生産性の低さに現れていた。こうして、経済発展の指標として高加工度化という分析視点が不可欠とされるようになった。(フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)

 1970年代になると、産業構造の知識集約化という視点が注目されるようになった。これは繊維産業は単純製品からファッション性の高いブランド製品へ、サービス業も単純・反復労働から金融工学やコンサルティングへというように、経済発展につれて同じ産業であってもより知識・技術の集約度の高い方向へと変化し、「物」の生産そのものよりも「情報」の生産がより大きな付加価値を生んでいるという見方である。(フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)

 マーク・ポラトは、『情報経済入門』(1977)において、情報交換の場として市場と組織内(企業や政府の内部)を考え、市場における情報の供給主体(通常の意味での情報産業)を第1次情報部門、組織内情報の生産活動を第2次情報部門と呼んだ。ポラトはこの枠組みに基づいた産業連関表を作成し、1967年のアメリカ経済では第1次情報部門の付加価値がGNPの25.1パーセント、第2次情報部門が21.1パーセントを占めるとした。(フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)

 また、輸出産業と国内産業と言う分類の仕方もある。
産業は、その製品・サービスが国際的に取引され国際競争にさらされているか、あるいは主に国内で取引されているかによって、輸出産業と国内産業とに区分される。こうした輸出産業と国内産業という分析視点は日本経済の二重構造を論じる際に用いられる。一般に、日本の代表的な輸出産業である自動車産業やエレクトロニクス産業は国際競争力が高いが、建設、農業、医療、金融などの国内産業は生産性が低いと言われる。(フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)

 輸出産業と国内産業との区分は政策や社会環境によっても変わってくる。農産物は国際的に取引されている商品であるが、日本では農業保護政策によって各種の農産物が国際競争から隔離されている。電力は日本では国内産業であるがヨーロッパでは国際取引されている。情報サービス業は従来は国内産業と考えられてきたが、情報通信技術の発達を背景に、インドや中国を拠点として遠隔地からサービスを行う動きも出てきている(オフショアリング)。(フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)

 日本の証券取引所に上場されている企業は、証券コード協議会が定めた統一的な基準により33の業種に分類されている。証券コード協議会は全国の証券取引所により組織され、東京証券取引所が事務局を務めている。(フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)

 証券コードによる業種分類は基本的には日本標準産業分類に準拠している。毎年の決算書を元に、上場企業の各事業のうち最も売上が大きい事業の業種がその企業の業種とされる。事業内容が大きく変化する場合は、年に2回、所属業種の見直し審査が行われる。(フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)

 この様に、既存の経済学の産業分類は、産業構造や経済構造を解析したり、分析するという視点よりも、どちらかというと経済発展やそれに伴う統計分析のための手段という側面が強い。
 しかし、本来は、企業業績を解析したり、また、産業政策、経済政策、経済予測の基礎資料として、そして、ひいては、産業を構造化するための根本として分類される必要がある。



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