我々は、今の生活を所与のもの、当たり前なこととして受け止めているが、実際には、現代社会は、諸々の変革や革新の上に成り立っているのである。特に、社会の基礎、底辺部分において、革命的な変化があったことを忘れてはならない。
 ここ一、二世紀の間に起こった変動を認識せずに、経済現象や社会現象を解明しようとしても、不可能なことである。なぜならば、今日、生起している経済現象や社会現象の根本原因の多くは、ここ一、二世紀の間に起こって変化に依っているからである。

 我々は、日常、何の不思議も感じる事なく、テレビを見て、携帯電話をかけ、飛行機に乗っている。しかし、そのほとんどが、つまり、テレビや携帯電話、飛行機と言った製品は、ここ百年足らずの間に起こった変革の産物なのである。
 ガス、水道、電気をライフラインと言い、我々の生活に欠く事のできない、生命線と言われている。しかし、そのガス・水道・電気ですら同様に、百年足らずの間に普及したのである。
 エネルギーの源である石油の歴史も1959年、ドレーク大佐がペンシルベニアで鉱脈を発見したところから始まるとされているのである。原子力にいたっては更に短い。
 飛行機に例(たと)えてみれば、1903年のライト兄弟による有人飛行に始まるとされている。この様に、我々が生活に欠く事のできない物事の悉(ことごと)くが、百年足らずの間に起こっているのである。そして、それらの変化の所産が、現代の経済や産業の礎となっている。

 では、近現代に起こった変化、変動には、どの様なものがあるであろうか。次にそれを上げてみたい。
 第一に、産業革命に代表される生産革命である。第二に、農業革命に代表される食料革命。第三に、エネルギー革命。第四に、交通革命。第五に、電気、通信革命。第六に、情報・システム革命。第七に、科学、技術革命。第八に、金融革命、会計革命に代表される経済革命。第九に、政治制度革命。第十に、宗教革命である。

 これらの変化は、それぞれ単体で起こっているわけではない。それぞれが似影響を及ぼしながら、相乗的に変化してきたのである。そして、これらを下地として人口爆発や世界大戦のような事象も起こり、更に環境破壊、公害、温暖化と言った深刻な問題も引き起こされたのである。産業革命や技術革新がなければ、核兵器や生物化学兵器のような大量破壊兵器、非人道的兵器も開発されなかったのである。

 この様に、現代の産業は、直線的、単線的に発達してきたのではなく、複合的、構造的、かつ、段階的に発達してきた。故に、現代の産業の発達を理解するためには、各段階を構造的な、また、歴史的に解析する必要がある。

 その為にも産業を構成する個々の要素を明らかにし、把握しておく必要がある。

 近代民主主義は、産業革命を中心とした生産革命がなければ成立していない。また、交通革命や通信革命にも支えられている。民主主義は、直接的に国民が政治に関われる環境が整わなければ成立しない。交通や通信が発達していなければ、選挙によって代表を選び、国政の場に送り出すなどと言うのは不可能なことなのである。また、住民登録や出生記録といった記録や書類が完備されなければ、選挙民を特定することもできない。民主主義というのは、大変に手間のかかる政治制度なのである。また、国民一人一人の生活基盤が確立していなければ、他人の政治的な信条を尊重するなどという事はできない。その意味でも、民主主義は、国民一人一人の欲求を満たすだけの社会の生産力を背景としなければ成り立たないのである。何せ、現代の一般的の標準的な国民の生活ですら、江戸時代の王侯貴族並の生活水準を維持しているのである。
 産業革命は、ただ単に技術革新だけに支えられているわけではない。生産技術、工程管理の進歩にも支えられている。また、金融革命に依る貨幣経済の発展にも依っているのである。
 また、我々は、産業革命しか、念頭にないが、産業革命に勝とも劣らない変革が数多くあるのである。その一つが食料革命である。食料の生産力が飛躍的に伸びたことで、人口が爆発的に増加したのである。その人口の増加が、産業革命に拍車をかけた。そして、それを可能たらしめたのは、エネルギー革命である。

 この様なダイナミックな経済、社会の地殻変動によって今日の産業は形成され、発展してきた。産業の基盤の確立なくして、経済発展はないのである。故に、経済の基礎構造を解明することは経済を理解する上で不可欠な要素である。


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