商品・製品特性とは、当該商品・製品固有の属性をいう。この様な商品・製品特性は、製品を生み出す産業の構造、在り方に影響を与える。商品、製品特性には、物理的特性、市場的・経済的特性、法的特性がある。また、政治的な特性も状況によって派生する。市場的・経済的特性は、コストに反映される。

 商品は、経済学的に言えば、財である。なぜ、商品を財と言い換えるかというと、一般に商品は物であるが、サービスのように目に見えないものが含まれるために、無形な物まで含めて財という。

 財には、経済財と自由財がある。経済財は、私的財と公共財からなる。私的財は、消費財と生産財(資本財)からなる。そして、消費財は、耐久消費財と非耐久消費財がある。
 また、経済財は、貯蔵可能がどうかで貯蔵財と非貯蔵財に区分される。

 生産財は、生産手段と生産原料からなる。即ち、生産原価を構成する財である。生産手段には、生産設備や労賃、生産に関わる経費が含まれる。生産原料とは、原材料、部品などの消耗品である。
 生産原価は、原料、人件費、経費に区分される。また、直接費と間接費にも区分される。

 同じ財でも購入先が違うと消費財と生産財の違いが生じる場合がある。つまり、消費財と生産財の区分は、絶対的な基準ではなく。前提条件によって決まる相対的な基準である。
 消費財を生産する工業を消費材工業と言い。生産財を生産する工業を生産財工業という。消費財工業と生産財工業とでは、生産手段や販売ルート、市場に差がでる場合がある。ただし、厳密に消費財と生産財を区分できないために、この区分も便宜的、相対的な区分である。定義は、要件定義によってなされる。

 消費財とは、消費される財である。消費されるとは、使用されると価値が失われていくことである。また、使用されなくとも一定の期間たつと価値が失われる物も消費財である。それを行使すると価値が失われるのであるから、無形のサービスも含まれる。
 耐久消費財は、耐久性のある消費財である。耐久性というのは、ある一定期間、価値を保持する事を意味する。価値を保持するというのも、帳簿上、即ち、会計上において価値を保持する物や減価していく物を指す場合もある。
 通常、一年以上使用する物に関して耐久消費財として会計上は資産計上するのが原則である。一年以内に消費、消耗する物は費用として処理される。
 現金、株や有価証券、不動産のように減価しない財を非減価償却資産といい、建物、設備のように減価する物を減価償却資産という。いずれも、全てが有形な物とは限らず、非減価償却資産に含まれる特許権や減価償却資産に含まれる営業権のような無形な物も含まれる。

 非耐久消費財は、石油のように貯蔵が可能な財と生鮮食料や電力の様に貯蔵が不可能な財とに別れる。ただ、この場合も技術的な問題があり、技術や設備、装置があれば、非貯蔵財でも貯蔵財となりうる。
 石油のような備蓄が可能な財は、それが消費される時点が問題となるのに対し、貯蔵のきかない製品は、それが生産された時点が問題となる。また、貯蔵することが可能な物でも陳腐化する物は、貯蔵する期間が重要となる。更に、在庫にかかる費用と金利という時間的価値が重要になる。

 また、輸送コストが問題となる財、例えば、パイプラインやケーブルと言った輸送設備の保守の問題がある。

 JR東海の子会社であるジェイアール東海パッセンジャーズが賞味期限を改竄したことが新聞に載っていた。その記事の中で弁当の賞味期限は、製造開始から14時間、サンドイッチ、おにぎりの賞味期限は、18時間以内とある。つまり、弁当の市場価値は、14時間、サンドイッチ、おにぎりの商品価値は18時間しかないことになる。賞味期限を過ぎると商品価値を失い廃棄することになる。(日本経済新聞2008年2月23日)

 市場は、リスクの在り方によっても違う。つまり、危険物を扱う財は、その為の保安上コストがかかる。また、食料のように賞味期限が問題になる産業は、鮮度を維持するためのコスト、所謂(いわゆる)歩留まりが重要になる。

 また、製品の生産工程によっても産業構造は規制される。石油のような装置産業は、初期投資が巨額になり、しかも、最終商品の格差が少ないために、過当競争が起こりやすい。同じ食料でも海鮮食品のように鮮度が重要な商品と米のように備蓄のきく商品とでは、販売形態が自ずと違ってくる。
 この様に、商品の属性が該当商品に関わる産業の構造を制約する。故に、競争の原理とか規制緩和というように、一律に市場の原理や規制を規定することは不可能である。

 商品・製品の特性は、製造工程に規定される。商品・製品特性は、製品開発の過程による。商品・製品特性は、商品・製品の形体や形状、構造に規定される。形体には、有形か、無形かも含まれる。商品・製品特性は、素原材料に規定される。商品・製品特性は、製品の目的、用途、機能に依る。商品・製品特性は、製品の地理的条件、また、運送・販売経路に規定される。商品・製品特性は、市場価値、価格に依る。商品の特性は、市場、取引の在り方によっても違う。商品特性は、法や税といった制度に関わる。

 商品の製造工程によるとは、プラント製品か、組み立て加工品か、連産品かと言った事によって商品の価値や性格が規定されるからである。また、工業製品なのか農業製品か、水産品なのかも重要な要素である。工程は、物理的特性、また、市場的・経済的特性の基礎となる。
 商品の開発によって規定されるというのは、石油製品は、石油探索に依るために、その探索やプラント建設費などがコストに影響する。薬品は、薬品の研究開発に関わる費用に影響を受ける。また、初期投資がかかるか、かからないかによって製品の価格構造、損益構造、製造構造、企業形態に重大な影響を及ぼし、それによって商品の性格が形付けられる。知的財産のように何等かの権利が附加された製品もある。これらは、市場的・経済的特性に影響する。
 商品の特性は、形体、即ち、有形か、無形かとか、形状、気体か、個体か、液体か、粉末か、固形かによって違う。大きい物か、小さい物か。また、構造、建造物とか、回路か、機械か、有機物かと言った事によっても違う。形体、形状、構造は、物理的特性を形成する。
 商品の特性は、石油を原材料とした石油製品だとか、化学製品だとか、野菜や果物を材料にした生鮮食料か、鋼材を材料とした自動車かといった点で商品の性質に差が生じる。耐久性の有無や腐りやすいかどうか、保存できるか否かも決定的になる。農産物のような天候に左右される物を原材料にしているかによっても違う。原材料は、商品の物理的特性の基礎となる。
 また、商品特性は、それを何に、どの様な目的で、どの様にして使うのかによっても違ってくる。例えば、部品なのか、完成品なのか、子供向けなのか、大人向けなのかと言ったことによって商品の性格は違ってくる。耐久品か、消耗品かと言った違いも、贅沢品か、必需品なのかも重要な性質である。軍需物資、戦略的物資であるか否かによっても違う。目的や用途は、市場的、経済的特性を形成する。また、用途や目的は、状況によっては、政治的な特性も持つ。
 また、製品は、それが採れる場所、例えば、石油ならば産油地は限られているし、海産物ならば海洋が産地となる。その事によって価格や産業の在り方は自ずと違ってくる。運べる物か、運べない物か、運ぶにしても特殊な容器がいるのか。配管、配線に依るのか否か。メーター売り、重量売りと言った荷姿による差もある。統制品のように販売経路が確定された商品もある。リサイクル商品もある。地理や運送は、市場的、経済的特性の素となる。
 また、市場価格、つまり、高級品であるか、日用雑貨であるかによって製品の性格は違ってくる。株のように財に限りがある物もある。市場価格は、市場的・経済的特性である。
 市場取引の在り方によっても商品の特性は代わってくる。専売品のように予め政府によって価格が決められている物もある。また、相対取引の物もある。この様に取引の在り方が商品の特性を規定する。以前の米のように、一旦政府が買い上げる商品もある。市場、取引形体は、市場的、経済的特性である。
 また、国の規制や税の在り方によって製品の特性にも差が生じる。国営鉄道か、私鉄かでサービスに差が生じることもある。危険物か、否か。資格が必要か、否かも商品の性格を規定する。麻薬のように禁制品もある。一部の動植物のように輸出や輸入を禁じられている物もある。これらは法的特性である。

 市場・経済特性には、消費特性や販売特性なども含まれる。消費特性とは、消耗品や耐久品と言った消費に関わる特性を指し。販売特性とは、受注製品とか、定価販売品と言った販売に関わる特性を指して言う。

 これらの商品特性は、産業や市場の構造に重大な影響を与える。これらは、特に、価格の弾力性に影響を与える。これらの点からも産業構造を考察する必要がある。


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