現代の日本の財政は、フォアグラのようなものだ。政治家や官僚の都合で本来の機能とは、無関係に不必要に脂肪を付けられ、肥大化している。ある意味で、不健全、病気にさせられているのだ。財政本来の働き、機能を忘れた結果である。

 財政状況の是非(即ち、赤字か、否か)は、財政の働きから考えられるべきであり、原則論から考えるべきではない。財政制度の機能と構造が矛盾していれば財政赤字は必然的なものとなる。

 景気刺激策が目的化すると財政の健全さ気損なわれる。財政は、経済発展のための基盤整備や国民生活の基盤、福祉のような国家理念のために活用されるべきものであり、景気を調整する目的だけで発動されれば、機能不全を引き起こしてしまう。

 財政には、民間企業における経営者のような人間がいない。つまり、財政の経営責任を担っている者がいない。組合も、民間の論理とは、違う論理で動いている。民間ならば、収益があがらなければ、全員が責任を問われる。その結果、組織、機構に問題点がフィードバックされ、環境に適合する。誰も責任をとらない、とれない無責任体制の上、支出や報酬をチェックし、抑制する働きがない。これは、構造的問題である。経営からも、組合からも相互牽制が聞かない。皆、身内意識、仲間意識しかない。そのような内向きな行動規範しか働かなければ、自浄機能が働かなくなり、かばい合いや、機密主義が横行するようになる。社会的正義に照らして間違っている事でも、表面化せずに、内々に処理をするようになる。この様な構造を改めないかぎり、問題の本質は改善されない。

 一時的な赤字が、恐ろしいのではない。慢性的な赤字が恐ろしいのである。慢性的な赤字は、往々にして、構造的な赤字である。この赤字を生み出す構造こそが、危険なのである。なぜならば、この様な赤字を生み出す構造にこそ、国家を破滅に導く根本的な病巣(たとえば、戦前の軍国主義のような)が、隠されている場合が多いからである。

 現在の財政の特徴は、単一的、絶対的、硬直的、集権的、計画的、統制的、観念的、独占的、全体的、統一的、標準的、閉鎖的、官僚的、形式的という事である。
 そして、自己完結型の体制によって運営されている事である。

 絶対的基準によって自己の価値を相対化し得ないために、内部からの圧力を抑止する手段をもてない。内部圧力を抑止できないために、下方硬直的になる。

 国家財政は、資本主義とは違う原理が働いている。
 まず第一に、国家財政は、単年度均衡予算制度である。
 第二に、公共事業は、非営利事業であり、基本的に収益の資本への蓄積は許されていない。
 第三に、当然、金融機関や一部の例外を除いて、特定の民間企業に対する投資が許されない。
 第四に、営利、即ち、収益を前提とした会計学的原理とは、別個の非会計的原理で運営されている。
 第五に、独占的事業である場合が多い。そのために、統制的事業運営が為される。
 第六に、不経済な事業を前提としている場合がある。
 これらは、資本主義というよりも社会主義的な原理である。ある意味で、国家財政や公共事業は、資本主義内の社会主義体制といえる。
 これらは、国家財政を赤字にするために機能する。国家財政は、破綻するべくして破綻している。

 民主主義の要は、財政である。財政の働きは、民主主義そのものでなければならないといっても過言ではない。翻って言えば、財政から民主主義が失われた時、民主主義は、破綻するとも言える。ならば、今日の日本の財政は、民主的かと言えば、そこは、はなはだ心許ない。ここに、現代日本の危機が潜んでいる。
 
 その国家体制が民主主義的であるか否かは、予算制度と税制度の在り方によって試される。民主主義であるか、否かは、意志決定の過程と法則によって決まる。意志決定の過程や法則によって責任の所在が明らかになるからである。いくら、政治体制が民主的に見えても、行政が、全体主義的、国家主義的であれば、民主的体制とは言えない。
 財政の危機は、民主主義の危機なのである。財政の民主主義が失われた時、民主主義の実質は失われるのだと言う事を自覚する必要がある。そして、民主主義は、税制と予算制度によって支えられていることを忘れてはならないのである。



 一旦、財政赤字が財政の一定の割合を超えると破壊的な働き(たとえば、革命や戦争、ハイパーインフレ、デフォルト、また、思い切った経費の削減等)が作用しないと解消できない。いずれにせよ、それは、国家存亡の問題であり、国民一人一人の運命を左右する大事である。財政赤字の怖さは、それが、国家の存亡や民主主義の存立に直結している点であり、圧制や戦争の原因となることにあるのである。
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