経済の現状

日本経済の現状について

石油・石炭、生産用機械、建設



経済的出来事が構造の違う産業にどのような影響を及ぼすか



戦後の日本の経済史において特筆すべき出来事は、ニクソンショック、オイルショック、バブル崩壊、リーマンショックであろう。
戦後の経済に大きく影響を与えた代表的な因子は、石油価格と為替である。
これらの出来事を石油業界、機械業界、建設業界を通して検証してみたい。


産業構造の違い


産業構造の違いは、経済の動向大きく影響される。
エネルギー業界というのは、典型的な装置産業である。
エネルギーは、情報産業同様、社会のインフラストラクチャーを構成する産業である。


石油業界の構造



石油業界は、典型的な輸入業界である。それに対して機械業界は、輸出産業型、建設業界は内需型といえる。
石油業界と機械業界は、建設業界を挟んで対照的な動きを見せている。

石油価格の動向や為替の変動、金利の動向、その時々の金融政策などが、個々の産業や企業にどの様な影響を与えたのかを検証する必要がある。

先ずその為には、石油価格、為替の変動金融政策がどの様な影響を与えたかを具体的な産業に当てはめて検証する必要がある。

石油価格や為替の変動に影響を受けやすい業界と受けにくい業界がある。

石油価格の動向を最も直接的な影響を受けるのは、当然、石油業界である。
石油業界は、石油価格のみならず、為替の変動の影響もまともに受ける。

建設業の構造



又為替の変動の影響を受けやすい業界としては、生産用機械産業が考えられる。

逆に、石油価格の変動や為替の変動の影響を受けにくい産業として建設業をあげた。
また、建設業界は、バブルの影響を受けやすい産業である。

利益率を見ると石油産業と生産機械産業は、対称的な動きをしている事が見て取れる。それに対して、建設業は、中立的な動きをしている。
リーマンショックにおいて利益率で一番、打撃を受けたのは、生産機械だが、総資本回転率で見ると石油業界である。しかも。石油業界の方が直後に反応が見えているのに、生産機械は、一年遅れで反応がでいる。それに対して建設業界は、利益率、回転率共に直接的な被害を受けているようには見えない。
この様な差は、個々の産業の持つ構造に由来している。

石油業界は政治に左右される。石油は、国際的戦略物資である。石油は、国際政治や軍事が深く関わっている。
これに対して建設業界も又、政治的な産業である。ただ、石油が主として外部の政治状況に影響されるのに対して、建設業界は内政の影響下にある産業だと言える。

売上を見ると石油・石炭産業は、原油価格や為替に振り回され、乱高下しているのに対し、生産用機械は、リーマンショックの影響が色濃く出ている。それに対して、建設業界は、バブル時代の影響が特別損失の動向などに露わに出ている。

石油業界や機械業界が国外の経済状況や政治事情の影響を受けやすいのに対して、建設業界は、国内の経済状況や政治事情に左右される。

建設業の構造



建設業界の重要性は、公共事業を通じて資金を市場に供給する際、導入部分の役割を果たしているのが建設業界だという点である。
つまり、建設業界は、財政の状態の鏡の働きをしていると考えられる。
なぜ、建設業界得に土木業界は、資金の供給の導入部分の役割を果たしているのかというと、第一に、業界が労働集約型だと言う点が上げられる。又、第二に、業界がピラミッド構造を持ち、頂点に立つ会社は、限られてしながら、広い裾野を持っている点が上げられる。第三に、一つひとつの事業の規模が大きく、長期に亘ってい巨額の資金を集中的に投入できる点にある。第四に、事業目的が公共性が高く、対象となる事業が共同消費性、排除不可能性、非競合性といった公益という目的にも一致しやすいからである。
これらの点は、公共事業が資金供給の導入部分に選ばれる理由であるが、同時に.利権化しやすいとか、不正を招きやすく、腐敗しやすいという体質の原因にもなっている。

公共投資の動向は、建設業界を左右すると考えられるがその公共投資は、1998年の26兆円から下降し、2010年には、13兆円とほぼ半減している。
公共投資か半減しているのに、歳出が思うように削減できていない。それが財政の本質的問題、構造的問題を暗示している。

建設業は、為替の変動や石油の高騰と言った外部要因より、財政状況や地価の高騰と言った内部要因の影響の方が強い。
財政状態や地価の高騰と言った国内の経済状態は利益率に反映される。しかし、それが総資本回転率になると幾分和らげられているように見える。



法人企業統計 財務省


法人企業統計 財務省


法人企業統計 財務省


法人企業統計 財務省



石油産業


石油は戦略物資である。
石油は、政治や軍事戦略上、欠かす事のできない物資である。
人類は、石油を巡って戦争をし、また、石油を利用して政治戦略を成就しようとした。
石油は、太平洋戦争の引き金を中東戦争では武器として使われた。
それが、オイルショックを引き起こし世界を混乱させたのである。

そのために石油価格は、単に市場によって決められるではなく、政治に大きく左右されてきたのである。

石油は、装置産業であり、連産品である。それが原価計算を複雑にしている。

売り上げと売上原価、在庫の関係は要注意である。原価計算の仕方によっても利益は変化する。
たとえば、個別原価計算方式では、基本的に個々の製品にかかる固定費は変わらないのに対して、総合原価計算方式では、製品を大量に作ればそれだけ個々の製品にかかる固定費の率は下がり、単位製品あたりの原価を下げる事ができる。
また、直接原価計算か、全部原価計算かによっても売り上げと原価、在庫の関係は変わってくる。
短期利益を株主や融資先から求められる経営者は粉飾とは言わないが、長い目で見た時、企業経営の足枷になることは解っていても不景気なのに、大量生産を行って在庫を積み増しすることで原価を下げる利益を上げる選択をすることが多々ある。
更に、在庫の貨幣価値は、数量だけでなく、評価基準の変更することによっても変える事ができる。
この様な売り上げと原価、在庫の関係を検証するためには、生産数量と仕入れ数量と会計上計上されている棚卸し資産の額とを照合してみる必要がある。
石油製品の付加価値生産額指数は、70年後半から80年代にかけて低調である。それに対して、会計上の在庫額は、78年145億円、79年304億円、80年375億円、81年370億円と急上昇している。
2010年4月から棚卸資産の原価配分方法の1つである「後入先出法」が会計の国際共通化の流れを受けて廃止された。「後入先出法」は一部の石油会社に許されてきた会計基準であるが、今後は、石油会社も「総平均法」や「先入先出法」などの会計基準への変更が迫られることになる。
石油業界は、オイルショックの際、在庫の評価基準「後入先出法」に変更した。利益操作に使われるとして、IFRSでは後入先出法が認められておらず、
「後入先出法」は、単価が安いときに買った昔の在庫が残っていれば、石油価格の上昇局面において、棚卸資産に含み益が残ってしまう。逆に価格が下落局面にあれば、棚卸資産に含み損が生じることになる。オイルショック時に原油価格の高騰に悲鳴を上げた石油元売り各社がそれまでの会計基準を変更して採用したといういわくつきの基準である。

「後入先出法」が採用される以前は、「先入先出法」が石油業界でも一般的だった。
「先入先出法」だと原油が急騰した場合は、莫大な利益が会計上あがってしまい、逆に、急落すると莫大な損失が出てしまいキャッシュフローが追いつかなくなる。オイルショックの際、その弊害が強く出たので、多くの石油元売り会社が「後入後出法」に会計基準を変更した。

会計基準の変更が経済や景気に決定的、あるいは、深刻な影響を与える事がある事を十分に為政者は留意しておく必要がある。

石油業界の歴史は激動の歴史である。
石油価格は、原油価格の変動と為替の変動が複合された表れてくる。

70年代は、1971年8月ニクソンショック。1973年10月、第一次石油危機。1979年6月、第二次石油危機と立て続けにその後の世界を揺るがすような大事件が起こった。
石油業界は、その都度大きな衝撃を受けた。

石油製品・石炭製品製造業の母集合は、全規模で1985年頃か800件から900件前後で変わらない。資本金一億円以上の規模は企業は、統計を取り始めた1975年から60件前後を横ばいしている。

1973年10月6日に、第四次中東戦争が勃発。石油輸出国機構OPECは、原油価格の大幅な引き上げを断行。この結果、1バーレル当たり2ドル台だった公示価格が、1974年1月から一気に11ドル台にまで達した。これが第一次石油危機である。
さらに1979年には、イランの政変をきっかけに、石油需要が逼迫し原油価格は暴騰した。
1979年6月には販売価格が18ドルに、同年の11月には24ドル、1980年1月に26ドル、4月に28ドル、そして8月にはついに30ドルの大台を超えた。これが第二次石油危機である。

1977年に1兆8千億円、78年に1兆4千億円だった石油・石炭業界の在庫が、79年、3兆円、80年、3兆7千億円と急騰したかと思うと84年には、2兆3千億円、86年には、1兆3千億円と荒っぽい展開になっている。

石油価格の上昇は、物価指数全体にも影響を及ぼしている。第一次オイルショックが起こった時、企業物価指数は、前年同期比で32%まで跳ね上がり、その後沈静化したが、第二次オイルショックには、18%迄再び上がったのである。

日本は、原油のほぼ全量を海外からの輸入に頼っている。しかも、主として中東地域や南米といった政治的に不安定な特定の地域に産油国が限られている。
しかも、原油は代表的な戦略物資であり、国際政治の影響を受けやすい資源である。
また、石油は、戦後長期間に亘ってエネルギーの中核を担ってきた。二十世紀は、石油の時代と言っても過言ではない。

この様な石油業界は、原油価格の高騰や為替の変動の影響を直接受けてきた。

石油業界ほど政治に翻弄された産業はない。第一に石油は国際的戦略物資である。
石油が戦略物資だというのは、石油が軍事に深く関わっているからである。太平洋戦争の引き金を引いたのも石油の輸入を日本が止められたからだとも言われている。国債メジャーの存在、それに対抗する目的で結成された国際カルテルOPEC、第一次オイルショック、第二次オイルショック。中東戦争。オイルショック対策のために安定供給を目的とした規制。そして、自由化に伴う規制緩和、近年では、温暖化問題と石油業界は、政治に振り回され続けてきた。それだけに、その時代その時代の時代背景の影響を正面から受けてきた。

この様に原油は、経済の中核を担うと同時に国際経済の影響を受けやすいため、戦後長期に亘って石油業界は、規制を課せられてきた。

石油産業の特徴は、第一に装置産業だという点である。第二に、連産品産業と言う事である。第三に、輸入産業だという点。つまり、為替の変動の影響下にある。第四に、規制産業だったという点にある。第五に、石油は戦略物資だと言う事である。石油は、歴史的に見て国家戦略に深く関わってきた。第六に、石油は、原産地が政治的に不安定な地域に限られていていると言う点である。つまり、石油産業は、地政学的産業である。

石油業界は、1962年に石油業法が制定され、1973年に緊急時二法などが制定され規制が強化された。1996年に特石法が廃止された。特石法の廃止に基づく規制が緩和される事によってSS間の過当競争が激化し、SSは、激減した。

又、近年では、温暖化問題によって石油離れが進んでいる。



経済産業省



法人企業統計


法人企業統計


法人企業統計 財務省


法人企業統計 財務省


総務省統計局











企業法人統計  単位1兆円

企業法人統計  単位1兆円

法人企業統計 財務省








業種別季節調整済指数 付加価値額生産(平成22年=100.0)
1978年から2012年まで


業種別季節調整済指数 付加価値額生産(平成22年=100.0)
1978年から1985年まで

経済産業省
業種別季節調整済指数 在庫(平成22年=100.0)
1978年から1985年まで

経済産業省
業種別季節調整済指数 在庫率(平成22年=100.0)
1978年から1985年まで

経済産業省










法人企業統計 財務省   単位10億円

法人企業統計 財務省





法人企業統計 財務省


三井住友信託銀行


総務省統計局


機械産業


機械産業は、設備投資に連動している。故に、機械の生産量は、景気の先行指標として扱われる事が多い。

リーマンショックは、経済に対して深刻で根深い傷跡を与えた。リーマンショックの影響は、市場経済のみならず財政や為替にも及んでいる。
2002年以降、順調に回復し、2007年1兆3千億円あった工作機械の受注額は、リーマンショック以降、08年、1兆1千億円、2009年には、3千億円まで落ち込んだ。

売上高では、生産機械は、2007年4兆円あったのが、2009年には、1兆9千億円まで落ち込み、営業利益は、2千4百億円あったのが-2百40億円まで落ち込むなど、大体、4、5年の周期で乱高下を繰り返す変動が激しい業界である。

売上、在庫、フリーキャッシュフロー等の指標を見てもリーマンショック時のダメージが予想以上に大きい事が見て取れる。
なぜ、これ程深刻な打撃をリーマンショックは経済に与えたのか。それは資本主義経済の本質にも関わる問題である。

機械産業は、設備投資を反映し、景気先行性が強く、需要の変動が激しい。景気か悪化すれば他の産業に先んじて影響が出やすい産業である。例えば、リーマンショック時、石油、石炭、建設業の中で利益率の影響を最も受けたのが機械産業である。

全産業が国内で収益を上げるのが難しくなってきた今日、機械産業は、海外進出を図らざるを得ず。グローバルな市場で戦う事となる。そうなると為替の動向に敏感にならざるを得ない。

機械産業は、国内市場が飽和状態となり、伸び悩む中で、海外への進出が進んでいる。その為に、近年、輸出が大きなシェアを占めている様になってきた。その結果、為替の影響を強く受ける傾向が高くなっている。


生産用機械売上高 単位【1兆円】


法人企業統計 財務省



内閣府 機械受注統計


法人企業統計 財務省


法人企業統計 財務省










法人企業統計 財務省




建設業


建設業界は、土木工事業と建築工事業に二分類される。
土木工事業は、公共事業を主とし、建設工事業は、住宅やビル建設などを主としている。

建設業が市場経済において鍵となる役割を果たしているのは、公共事業を通じて市場に対する資金供給の窓口、入り口になっているという事である。又、土木業界は収益の多くの部分を公共事業に依存している。
この様に、建設業、中でも土木工事業は、政府と持ちつ持たれつの関係にあり、極めて政治色の強い業界と言われている。
又、建設工事業は、

建設業の市場規模は、90年代には、GDPの1割を占めていた巨大産業である。
GDPに占める割合だけでなく、投資という観点からしても建設業が日本の経済に占める役割は大きい。
建設業は、公共投資、住宅投資の担い手でもあるのである。
現在財政を深刻化しているのは、雇用を創出する為には、公共投資をする必要があるというのに、歳入が不足している事である。その影響を建設業界は、まともに受けているのである。歳出に占める税収の割合は、リーマンショックの翌年2009年には、38%にまで落ち込んでしまった。

就業人口から見ても、建設業の規模は、製造業、卸小売業、サービス業に次ぐ4番目の規模であり、雇用に与える影響は大きい。それでも兼背作業の就業人口は、2002年に比べて2009年は101万人減少した。(「図解雑学建設業界のしくみ」倉見康一、倉見延睦著 ナツメ社)

建設業者は、平成24年の時点で資本金一億円未満の業者、即ち、中小企業が全体の98.8%を占めている。(「業種別会計実務 建設」 トーマツ 建設・不動産インダストリーグループ著 中央経済社)

建設投資が、2013年には、49、5兆円と建設業界は、ほぼGDPの1割を占める産業である。(一般財団法人 建設経済研究所)

建設投資は、1992年に84兆円を記録した後、徐々に下降し、2010年には、42兆円まで減少した。

受注産業であるから利益率は低い。
設備投資が殆どかからないから総資産に占める固定資産の比率は低い。
仕事の現場は、主として屋外である。
そして、許認可事業である。

財政の悪化によって公共事業は、半減している。

公共事業が半減し、また、民間投資の減退によって土木、建設、いずれも苦戦をしている。

公共投資が半減し上に、建設業界は、規制緩和によって過当競争が激化し、収益力が低下し、更に経営環境を厳しいものにしている。

規制緩和による競争の奨励、収益力の低下、経費の削減、緊縮政策、自己資本率の向上、総資産、総負債の圧縮等の施策は、縮小均衡型の施策である。

名目GDPに占める産業別割合の推移
1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2006
農林水産業 5.9% 5.3% 3.5% 3.1% 2.4% 1.8% 1.7% 1.5% 1.4%
鉱業 0.8% 0.5% 0.5% 0.3% 0.2% 0.2% 0.1% 0.1% 0.1%
製造業 34.8% 29.1% 27.1% 27.3% 25.9% 22.2% 21.3% 20.6% 20.7%
建設業 7.5% 9.3% 8.9% 7.5% 9.6% 7.9% 7.1% 6.1% 6.1%
電気・ガス・水道業 2.1% 1.9% 2.6% 3.1% 2.5% 2.6% 2.6% 2.3% 2.2%
卸売・小売業 13.9% 14.2% 14.7% 12.8% 12.9% 14.7% 13.5% 13.2% 13.1%
金融・保険業 4.1% 5.1% 4.8% 4.8% 5.5% 5.7% 5.8% 6.7% 6.7%
不動産業 7.8% 7.9% 9.0% 9.7% 10.3% 11.6% 11.1% 11.5% 11.5%
運輸・通信業 6.7% 6.2% 6.2% 6.5% 6.4% 6.8% 6.7% 6.4% 6.4%
サービス業 9.3% 10.5% 13.8% 16.1% 15.7% 17.1% 19.6% 20.6% 20.7%
その他 7.1% 10.0% 8.9% 8.9% 8.6% 9.4% 10.5% 10.9% 11.0%




法人企業統計 財務省













法人企業統計 財務省 10億円




国土交通省   単位 1兆円 12年~14年は見通し


国土交通省   単位 1兆円






       

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