会計制度が成立させるためには、前提条件がある。その前提条件とは、第一に、会計主体の存在である。第二に、貨幣経済が、成立していることである。第三に、市場経済。第四に、金融制度を前提とし。第五に、資本市場の成立。第六に、税制度を前提としているのである。

 会計主体は、会計の単位である。会計主体自体が一つの機構(構造)を有している。会計主体は、会計主体であると同時に、経済主体である。経済主体とは、それ自体が、一個の独立した経済単位で在ることを意味する。

 貨幣経済と実物経済とを橋渡ししているのが会計制度である。生産財は、有限な資源である。それに対し、貨幣は観念的基準で貨幣の総量は、無限に拡大できる。しかも、貨幣は、自己増殖する。会計制度は、いろいろな制約を設ける事によって有限な世界と無限の基準とを仲介しているのである。会計的な制約のない財政は、貨幣の増大を制御できない。故に、貨幣価値が不安定になるのである。

 市場経済を前提とする。会計は、商慣行や商慣習を土台にして成り立っている。つまり、市場取引の在り方に大きく左右される。逆に、会計制度の変更は、商取引に重大な影響を与える。

 現代社会、経済は、借金によって飛躍的に進歩した。借金をしやすなったのは、会計制度が充実したからである。そして、それが金融制度の成長を促した。
 融資を受ける条件の中で、会計情報の占める位置は大きい。しかし、実際の実務では、担保力の方が重視される。そのために、現実では、会計情報の価値は、相対的に低くなる。含み資産や逆に不良債権がある場合は、尚更である。時価会計を要求する圧力は、この辺から発生する。

 資金調達の道が開けたことによって会計主体は、規模の制約から解放された。この様な資金調達の道を可能にしたのも会計制度である。

 狭義で言う会計と税務会計は別の体系である。目的も違う。本来なら、別々の処理をすべきである。ところが、多くの国において、別の体系でありながら、一つの仕組みを共有するようにできている。特に、現在の日本の税制度は、会計制度に寄生する事によって成立している。寄生しながら、会計制度の根幹を支配している。しかも、利益から、強制的に拠出する金額が、法的に決められている。税務会計は、強い拘束力を持つ。狭義の会計には、この様な拘束力はない。つまり、本にない強制力を末にある体系が持っている事になる。往々にして、本末転倒が起こることになる。そのために、会計制度の骨格が歪んでしまう事すらある。この様な歪みをどう構造的に解決するかが、重要な課題である。この様に、会計は、単一の構造や場を持つのではなく。複合的な構造と重層的な場を持っている。

 会計制度は、合目的的である。故に、会計主体は、会計の目的に追従した行動を選択しがちである。しかも、会計処理の方法は、一つに特定されているわけではなく。複数存在する。それ故に、会計制度の基礎となる構造の整合性が求められるのである。

 会計を構成する要素は、第一に、会計現実。第二に、会計主体。第三に、対象(株主、債権者、国家)。第四に、証憑である。第五に、会計の論理体系、言語構造。第六に、会計の効果・効用、機能・作用、第七に、会計の仕組み(記録する仕組み、情報システム)。これらの要素が構造的に結合されて会計制度は、構築されている。

 会計的現実、取引が存在しなければ、当然、会計は存在しない。
 会計的現実は、実物取引の上に成り立っている。それに対し、貨幣経済は、観念的なものである。実物経済は、有限なものであるが、貨幣経済は、限りがない。

 会計において、会計主体の判断は、特別な意味を持つ。会計主体の判断は、会計主体がおかれている環境や前提条件に依存している。故に、きわめて構造的である。
 例えば、会計主体が上場会社の場合、株主の力が強いため株価を高めるような会計基準や処理を選択する可能性が高いのに対し、未上場企業の場合は、社外流出を抑制する会計処理を選択する可能性が高い。

 本来、会計の主な対象は、投資家、債権者、行政、経営者、従業員、取引先、顧客である。現行の会計制度が対象としているのは、投資家、債権者、行政、一部経営者に過ぎない。

 会計は、合目的的な制度であるから、会計の経済に与える影響、働きは、会計の対象によって規制されている。

 会計は、証憑を土台とした情報システム・計算システムという構造を中核にして成り立っている。

 会計の実務は、証憑に始まり、記帳、仕分け、転記、集計という一連の流れである。そして、会計の計算体系は、この過程に生じる帳票群に集約される。会計の根拠となる取引の現実は、証憑によって立証される。この様に、会計というのは、実務的体系である。つまり、会計構造は、数学や物理的体系のような論理的体系の上に成り立つのではなく、商取引という事実、現実、実際的には、それを立証する証憑を土台にして成り立っている論理体系である。

 電子計算機の発達によって多くの処理が機械化された。しかし、簿記の基本的な考え方は同じである。簿記の重要性は失われたわけではない。

 実務的体系である会計は、景気の変動と相互に影響を与え合う。景気の変動は、時間的、地理的な現象である。故に、会計制度は、物理学的体系と違い、地理的、時間的影響や制約を受ける。

 会計の帳簿組織は、主要簿と補助簿からなる。このうち、主要簿は、仕訳帳、総勘定元帳、試算表、精算表、そして、貸借対照表、損益計算書、そして、最近では、キャッシュフロー計算書に集計される。
 この中で、企業の実体を表しているのは、試算表である。

 会計は、過程であり、時間的制約を受ける。一定の期間を区切って会計的処理は、一回転する。この様に、会計には、一連の手続きからなる時間的構造がある。これを、会計の一巡という。
 この様な時間的な制約を受ける事によって会計は、動的な性格と静的な性格の二面性を持つことになる。そして、動的な課目は、フローとして集計され。静的な課目は、ストックとして集計される。
 
 原則、規約に基づいた会計的文脈や文法が成立していなければならない。文法、文脈は、簿記に基づいている。簿記は、一種の言語体系である。

 現実の取引は、勘定科目に分類され、集計される。勘定科目は、資産、負債、資本、収益、費用の五つの枠に収斂していく。
 この様に、簿記には、言語的構造と集合論的構造をもっている。

 会計主体の持つ機構は、景気の変動を前提としていて、資本は、その変動に対する緩衝器の役割を果たしている。故に、会計的判断は、資本に収斂する。つまり、会計は、資本
を算出するための過程である。


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