自己の行動規範は、環境と自己との関わり合いによって形成される。人間は、個人の内面の場の働きばかりでなく、社会構造に働く場の働きの影響を強く受ける。
 会計的論理は、人間生活の奥底まで浸透し、人間生活を支配している。金持ちになれるかどうかは、生きる目的にすらなって、人の一生を左右している。この事実から目をそむけたら、真の人生の目的を見極めることはできない。

 会計が存在する空間は、いくつかの場が重なり合って成立している。会計的な場が成立するためには、経済的な実在が前提となる。つまり、会計が対象とすべき経済現象が存在しなければ、会計は成立しない。
 そして、市場という場の存在である。また、貨幣経済という場である。これらの実在と場の上に法的な空間が重なってくる。

 更に、経営的空間、労働と分配の空間といった内部空間が重なる。そして、その上に、個人的空間が乗っかるのである。

 現行の会計空間には、内部空間は、存在しない。労働者の保護に関する法は存在するが、それらの法は、会計的現実に結びついていない。故に、労働者によって形成される内部会計的空間を成立できないでいる。結果、内部会計は、成立していない。

 会計空間は、市場経済、貨幣経済、法的空間に従属して派生する。市場空間や貨幣的空間、法的空間、会計空間は、人的、観念的空間であり、物理的、生物学的空間に完全に重複した空間ではなく、限定的、部分的空間である。故に、会計空間は、市場経済、貨幣経済、法的空間の属性に規制される。

 人的空間や観念的空間は、所与の空間ではなく。限定的、部分的空間である。つまり、人の観念が作り出した空間である。スポーツを例に取るとわかりやすい。スポーツの空間は、ルールが作れだした空間内部のみ成立する。野球のルールは、フィールドを一歩出ると物理的空間おいてでも、時間的空間おいてでも、無効である。会計的空間も同様である。

 会計学的現実が先ずある。この会計学的現実を前提としないかぎり、会計学的空間は、成立しない。会計的現実とは、会計が対象とすべき現象であり、これは、会計学的空間が存在しなくとも存在しうる実在である。これらの実在や現象、場は、会計的空間に優先して存在する。

 そのうえで、会計が制度として成立するためには、法的な空間を作り出すことが必要前提となる。

 制度会計が成立する空間は、法が生み出す空間である。もし、会計に関連する法が複数ある場合は、それは、その法の数だけ空間が作られる事になる。それらの空間は、必ずしも物理的空間を共有しているわけではない。そして、法が、その空間を支配する法則を設定し、場が形成される。それらの場をリンク・結びつけるのは、会計的現実である。そして、会計的現実は、一連の体系、即ち、構造をもって成立する。

 個々の会計主体は、個々の空間内部における最適解を求めて意志決定をし、行動する。その結果、場の力が均衡するところに会計主体の行動は、収斂してくる。しかし、個々の会計主体に作用する力や法則は、一様ではない。また、個々の会計主体に与えられている情報も一様ではない。結果的に、市場に現れてくる会計主体の行動はマチマチなものになり、不確実なものになる。この個々の会計主体の行動の不確実性が、市場の機能の基礎となる。

 市場は、アンバランス、不均衡によって成立する。アンバランスさや不均衡が、解消されると、市場も消滅する。それは、定常状態である。この様な定常状態を必ずしも悪と決めつけるべきではない。問題なのは、市場機能が働かなくなることによって分配構造までもが定常化し、硬直化する事によって、所得や財の分配に偏りが生じる事である。

 会計現象、ひいては、経済現象を制御するのは、市場の構造である。会計制度が存在しなかったり、機能しなくても、市場の機能は、作用する。故に、市場機能は、会計機能に優先するのである。また、市場の機能は、貨幣の働きを基礎としている。故に、貨幣の働きは、会計制度に優先する。会計制度は、市場制度や貨幣制度を補完する形で発展してきた。市場や貨幣は、会計に優先するのである。
 しかし、市場に一度、会計制度が導入されると、市場は、会計制度による働きに支配されるようになる。また、市場の機能は、会計の機能によって強化される。故に、市場制度と貨幣制度、会計制度は、相互に補完的な関係にあるのである。

 会計的空間に存在する会計主体は、会計間場に働く力に従って行動する。故に、会計的空間が形成されると、その場の経済現象は、会計的原則に従って現れることになる。


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